思いを伝えるという習慣があることを知ったのは、いつの時代だったか。
『女の子からだけじゃなくて、男の子からもしていいんですよ』
と、ホープは言った。
思いを伝える、か………
『何をすればいい?』
『大体、花を贈ることが多いですね』
成程。ホープは何がなくても花を贈ってそうだよな。そして、それが似合うと思う。
でも、それを俺がやってもな……。違う気がするし。
どうあがいたって、気持ちなんて伝えきれない気がする。
「バレンタインにセラに何かを贈りたいからアドバイスをくれ……だと?」
……目の前の人の表情が、険しいものに変わった。
「……不都合?」
「相談があるというから、何かと思えば。……ノエル、どう見ても、相談相手に私は適任ではないだろう?」
「けど俺、そういうの正直苦手だし……本人にも聞けないし。ライトニングなら、姉妹だし、セラの喜びそうなものも知ってるかなって」
「だからといって……」
なんか、珍しいな。すごく、逃げ腰。
「それに俺、ライトニングしか頼れる人いないんだ」
「……」
実際そうだし、そのまま頷いてほしいんだけどな。……何だろ。
「ほら、それにライトニングだって、何かあげるんだろ? ホープにさ」
当然そうだと思ってたから何気なく言ったんだけど、さらに戸惑いの表情。顔も、どこか赤くて。
「……そうだが……」
目線が下がる。急に自信なさそうな顔。歯切れも悪い。
「だよな? ……何あげるんだ?」
そして、沈黙。空白の時間。
険しかったり赤くなったりする表情。
ようやく、ぼそっと答えが出てくる。
「………考え中、だ」
……納得。
「なんだ、ライトニングもまだ考えてなかったのか」
「……うるさい」
不機嫌そうに俺を睨みつける。……でも、そんなに照れて顔赤くして言ってたんじゃ、女神の騎士として持ってたような迫力も何もない。
むしろ……何だ。…………かわいい、な。
ちょっと待て。お、落ち着け、俺! いやほんと、こういうライトニング、かわいいなとは思うけどさ。
……ライトニング、頼むからこっちまで照れさせるのは……
「……ノエル」
「な、何?」
「他の奴なら、こんな話聞きもしないところだが……お前の頼みだからな。どこまで期待に添えるかわからないが、一緒に買い物に行くくらい、付き合ってやる。そこでセラへのプレゼントも、選べばいいだろう」
「お、感謝! ありがと、ライトニング」
「……ただし、条件がある」
「えっ、何?」
いつものライトニングに戻ったと思ったら、段々声が小さくなって。また、目線も下がって。
「……本当は、セラと一緒に考えようと思ってたんだ。でもあいつは、もう考えたっていうから……だから………」
ついには、消え入りそうな声で言う。
「……………ホープへのプレゼント選びも、付き合ってくれ……」
最初は、戦ってる時の鬼気迫るライトニングしか知らなかったんだけどさ。
そのライトニングにこんな表情させられるなんて………ほんと平和って、すごい。ホープって、すごいな。
ノエライではなく、ノエセラかと思いきやホプライな、余談的な話を、ノエル視点で。ライトさんとノエルの会話を書いてみたかっただけかも……お互い真面目にズレてそうとか、でも気は合いそうとか?