「どうでした? 僕とセラさんからの、バレンタインのプレゼント」
「………ぐったりだ」
「あはは、そうですよね。僕もです。普段と違うことしたから、余計ですね。でも、すごく楽しかったです。遊園地って子供が楽しむ場所かと思ってましたけど、大人も楽しめる場所ですよね。アトラクションもいいですけど、パレードとかダンスショーとかすごいですよね」
「ああ。着ぐるみ着たままでの、あの動きのキレ。毎日相当の鍛錬をしてると見た」
「そこですか? はは、ライトさんらしいなあ」
「……本当に、そう思ったんだ。少しだけの時間に人を楽しませるために、毎日鍛錬して……すごいな。……私は鍛錬はしているかもしれないが、あんな風に少しの時間だけでも人を楽しませられるのかな、とつい考えてしまった」
「あの時、そんな心配なんてしてたんですか?」
「……少しだけだ」
「ほんと、考えすぎですよ。わかるでしょう? セラさんもノエルくんも、もちろん僕も、ライトさんがそのままでいてくれるだけで、幸せですから」
「……うん。
でも、なんで……遊園地だったんだ?」
「セラさんが、ノエルくんが遊園地に行ったことがないから、みんな一緒に、"普通に"遊園地っていうものを楽しむ時間をあげたいって。それと戦ってばかりだったライトさんにも、楽しんでほしいって」
「……セラが」
「でも、それいいなって僕も思ったんです。ライトさん、ずっと戦ってばかりだったでしょう? ヴァルハラの前だって、セラさんを守るために軍に入って、一人で必死で頑張ってて。……だから、ああいう純粋に楽しめる場所に、連れて行ってあげたいなって。家族と一緒に過ごす時間を、あげたいなって思ったんです」
「……そんなの、お前だって一緒じゃないか。14歳でルシになって、それから必死で勉強して、アカデミーに入って。家族もいなくなって……子供らしい時間なんて、少なかっただろう……」
「僕はいいんですよ。それに、今日十分子供らしい時間を過ごさせてもらいました。いっぱい笑って、楽しい時間過ごさせてもらいましたから。ひょっとしたら、逆に僕が一番楽しんだんじゃないかなって」
「そうは見えないかもしれないが——それについては、私も負けない自信はある」
「はは、そう言ってもらえると、すごく嬉しいです」
「その……私から」
「……何かいただけるんですか?」
「その! 何のひねりもないが……バレンタインといえばチョコかと思って……すまん。私は、お前たちみたいな気の利いたものなんて、全く考えられなくて……」
「いいんです本当に。あれは僕たちがしたかったから、そうしただけです。それに僕は、ライトさんから何かもらえるっていうだけで……嬉しいです」
「その、それに……ノエルには悪いことをした」
「ノエルくん?」
「ノエルからセラへのプレゼントを買うのに付き合う予定だったのに……気がつけば、私からホープへのプレゼント選びに一日付き合わせてしまった……」
「それだけ、時間かけてくれたんですね」
「いろいろ迷って、決め切れなかっただけだ。ああでもないこうでもないと。チョコにするならするで早く決めればよかったのに、それすらできなくて……その分、ノエルが」
「ノエルくんなら、そういうモノがなくたって大丈夫ですよ。もしだったら、他の機会に埋め合わせすればいいですし。それにノエルくんならきっと、そういう時間も楽しんでくれたんじゃないでしょうか? ライトさんとの買い物なんて貴重ですよ」
「……だといいな」
「ほんと、ライトさんはノエルくんには甘いですよね。ちょっと、妬けるなあ」
「……何言ってる。お前だって同じなくせに」
「そうですけど、特にですよね。やっぱりライトさんは年下が好きなのかなって」
「……そういうわけじゃない」
「じゃあ……何なんですか?」
「……お前だから……だろ」
「……」
「………」
「ふふ、わかってましたよ。また言わせたくなっただけです」
「………本当に、かわいくなくなった!」
「ようやくこうやって図太くうぬぼれられるようになったんですよ? 誉めてくださいよ」
「ふん。もう、いい。寝るぞ。今日はもう疲れた!」
「僕もです。じゃ。一緒に寝ましょう?」
「ああ。……ホープ」
「何ですか?」
「……今日はありがとう」
健康的でほわっとした、甘いというより家族的な雰囲気になりました。一番楽しんだのは誰でしょうね?