最近珍しく物憂げにしてたノエルが突然、何か言い出したクポ。
「俺、……次の時代、行けない」
「えっ?」
「今、何と……」
よくわかんないこと言うから、セラもホープも困ってるクポ。
「俺、アカデミアにいたい」
「えっと……どうしたの? ノエル。早く、次の時代に行こうって言ってたのに。……まだ、見てみたいものでもあるの?」
「そうじゃない、セラ。そうじゃなくて……俺……」
そうじゃないなら何だクポ? はっきり言うクポ!
「別に何も言わなくてもいいの、ノエル」
……アリサ、クポ?
「……でも、アリサ。やっぱり俺、……」
見つめ合っても、モグにはわからないクポ。
「そうね……。あんたは、嘘つくの苦手だもんね。適当に嘘付いて弁解しとけばいいかなって思ってたんだけど。そういうの、あんたは嫌なのよね?」
「……うん」
「じゃ、いいわ。私も、嘘つくのやめるわ」
クポ?
「あのね。ノエルは、この時代に残るって決めてくれたの」
「えっ?」
……クポ?
「えっ、だって、ノエル、なんで? せっかく、ここまでやってきたのに。未来変えるのだって、きっともうすぐだよ? 未来を変えようって、一緒に頑張ってきたじゃない」
「ごめん、セラ。ごめん、ホープ」
「なんで? ノエル。どうしてそんなこと……」
「セラさん、落ち着いてください。……ノエルくん、そう思った理由を聞かせてもらえますか?」
「ごめん、俺……少し、疲れたんだ。なんのために俺、頑張ってるのか、わからなくなった。ユールもカイアスも俺を覚えてなくて。俺、一人になって……頑張って歴史変えて、幸せな未来になればそれでいいって思ってたのに、その時自分に何が残るか考えたら……すごく寂しくなって」
「そんなこと。だって、私たちだっているのに」
そ、そうクポ! モグだって、ブタネコ扱いされても、ノエルと一緒にいるクポ。なんだかんだ言って、ノエルを応援してるクポ!
「ごめん、違う。ごめん、まとまってなくて。
疲れたからじゃない。でも……俺、アリサと一緒に過ごしてみたくなった」
ク、クポ?
「えっ? それは……その……」
「言いにくいこと、言ってくれてありがとね、ノエル」
す、すごい笑顔でノエルの腕に抱きついてるクポ?
「まだわからないの? セラさん。ノエルはね、あなたじゃなくて、私を選んだの」
「……えっ」
ノ、ノ、ノエルが? アリサを選んだ、クポ?!
「セラさんもホープ先輩も、びっくりした顔しちゃって。セラさんなんて、ずっと一緒にいたのに、ノエルが悩んでること気付かなかったの?」
「え、あ、その……私」
「……驚かせて、ごめん」
も、もしかして、もしかすると……モグのせいクポ???
『モグ……最近冷たくないか?』
『ノエルはセラでもモグでもなくてアリサを取ったクポ。もういいクポ』
この前、確か、そんなこと言ったクポ……。
もしかして……、モグが余計なこと言ったから、本気にしたクポ?!
ち、違うクポ! そんなつもりなかったクポ!
そんなに真面目に考えなくてよかったクポ! 冗談くらい、通じてほしいクポ!
「その、アリサは……嘘つくの得意って言って、俺に対しても最初は本音、言ってなかった。だけど、いつだっけ。ヤシャス山で会った時から……俺には嘘つかなくなった。本音で接してくれるようになった。
アリサの話って、いろんな人の文句が……多くて。最初、本当に驚いた。でも、その分人のこと、よく見てて。言ってること、的を射てて。……慣れてみれば、飾り気ない言葉がすごくわかりやすかった」
「あら。ノエルの言葉だって、わかりやすいわよ。端的で」
「そうかな。言いたいことうまく言えなくて、伝えられてないって思ってた」
「伝えるだけが、すべてじゃないでしょ?」
「……うん、そう。アリサのそういうところ、すごく嬉しい。伝えるの大事って思ってても、どうしても俺、下手だから。俺が人に言わないところも、言わなくてもわかってくれて……俺の心配もしてくれて、すごく、嬉しかった」
「うふふ、ありがとう」
「アリサは……包容力、ある」
「ほうようりょく?!
……すみません、ノエルくん、びっくりしすぎて黙って聞いていたのですが……率直に言って、アリサは決してそういうタイプの人ではないと思いますよ」
そ、その調子クポ、ホープ。
ノエルの目を覚まさせるクポ! モグのせいでノエルがこうなったって知ったら、ライトニング様に……。
「もう、ホープ先輩ってば。もしかして、ノエルが私に騙されてるって言いたいんですかぁ? ほんっと、わかってないんですから。私の包容力は、万人向けじゃないんです! 本当に気に入った相手じゃないと、発揮されないんです。先輩が、私が100%の包容力をもって接するに足る素敵な人じゃなかったってだけなんですよ?」
「そ、そう……なのかな。悪いの、僕……?」
ホ、ホープ……クポ……。もっと頑張るクポ……。
「誰にでも笑顔とか包容力をふりまいてたら、自分だけじゃないんだ、って思われちゃいません? 八方美人って思いません? ね、セラさん。まあセラさんくらい素敵な人なら、たくさんの人に向けて笑顔を振りまいて優しくするってのもどうってことないのかもしれないわね。でも、私はそういうの難しくって。だから、特別な人に特別ってわかってもらうくらいで、十分なの」
「……えっと」
セ、セラ……応援できないモグを許してクポ……。
「あのさ……ごめん、セラもホープも。アリサは口悪いかもしれない。最初俺も、驚いた。でも悪気、全然ないんだ。ほんとは、すごく優しい。それに、案外かわいい」
「かわいい?!」
「ちょっと、案外は余計でしょ? でも、いいわ。ノエルがわかってくれるだけで、嬉しい」
「アリサに比べたら、大したことしてないと思うけど。
セラ、ホープ、ごめん。だから俺……もう少し、ここにいたい。アリサと一緒にいたい。今までこんな風にわがまま言ったこと、なかった。でも今は、俺……」
その後、アリサは、嘘つくのをやめたみたい……クポ。
「だってもう、嘘つく必要がないから。嘘つかなくたって、そのままのアリサでいいって言ってくれるの」
「うん。本当」
「……そうなんだ」
「でもね、不思議なの。嘘ついてる間はね、心の中で色んなこと思ってた。ホープ先輩についても、セラさんに対しても同じ。心では、ひどいこと言ってたわ」
「そ、そう。そうかもって思うこともたくさんあったけど」
「でもね、今は違うの。思ってること言ってもいいってノエルが受け止めてくれるようになったら、……ひどい言葉、全然思い浮かばなくなったの。逆なの。ああ私今までひどいこと考えてたんだなって気付いて、私、ほんとは先輩にもっと感謝しなきゃいけないのにって思うようになった。
……本当、ノエルのおかげね。今までは、自分が今後どうなるのか、その内消えてしまわないか、ずっと不安で仕方なくて。余裕なかった。でも、今はすごく落ち着いてるの。安心して、生きてるって思うことができてる」
「俺も、感謝してる。俺だって、同じ。その内消えるかもって……思わなくなった。アリサのおかげで俺初めて、頑張らなくてもいいっていう感覚、知ることができた。今まではずっと、自分がどうにかしなきゃ頑張らなきゃっていう気持ちだけでやってきて、でも、肩の力抜くってこと、やっとわかった。……」
二人は、幸せみたい……クポ。
目の前でベタベタと、見るに堪えないクポ……。
ホープは、「解決策が見当たらない」と繰り返して頭を掻きむしって、セラは……めっきり口数が減っちゃった、クポ。モグが話しかけても、笑ってくれなくなったクポ。
ライトニング様。
モグのせいで、モグのせいで……ノエルがおかしくなって、ヴァルハラに、行けなくて……ごめんなさい、クポ……
「ノエルが語るアリサのいいところ」……というリクエストをいただいたので、あああそういえば(ギャグでいいから)ノエアリパラドクスEDがあればいいのになと思っていたことを思い出しまして、ちょこっと書いてみました。「いつか帰るところ」
(4)〜
(5)とFind Your Way
(4)(前半)から続く話の設定。アカデミアに留まって、お互い、自分がいつ消えるかわからない不安がなくなって、落ち着いて過ごせるようになった……という話。
が。なんだこりゃと思いました(^^; かゆくて仕方ないです。キャラ崩壊気味な文章も、ノエアリなことも、すごーく違和感が。何よりノエルが……。
環境が許せば、アリサだってすごく素直な女の子になるのかなあと思ったりもして、後半を書くに至ったのですが、やはり私にとってアリサの魅力は裏表あって毒舌なところかもしれません。やっぱり毒を吐いててほしいなあなんて思っちゃいますね。
リクエスト、ありがとうございました!