×こどもの日で○ろくさん@gansuns_6からの派生妄想で、いろいろすっ飛ばしたノエセラ子育て奮闘記の続き4。
※LRFF13ネタありなのでご注意下さい!
前の話
つながっていく先
「ここは、これでよし……と」
まだ作業中だけど。一旦ハサミを置いて、ふう、とため息
それに呼応するかのように、「あー」という幼い声が下から聞こえた
赤ん坊——といってももう子どもと言った方がいいくらいか
毛も、ふさふさになってきた くりくりした毛
寝返りをして、はいはいを始めたと思ったら、つかまり立ちを始めて
おぼつかないけど、つかまらなくても立てる時間が長くなった
ぼて、とすぐに転んだりするけど
ほんと、すぐ何でもできるようになる 時間って、早い
でも、その両足で立ち上がったことに感動したのもつかの間、心配なこともある
『ふぎゃあああああああああん』
そんな叫び声が家中に響き渡ったのは、つい昨晩のこと
立つ感覚をやっと覚えてきたおぼつかない短い足で、何とか床の上を歩こうとしてたけど
がらがらがしゃーん、とバランスを崩して、おもちゃの山の上に倒れたんだった——
よしよし痛かったね、といつもみたいにセラが抱っこして慰めてたけど、その後子どもを寝かしつけた後、セラは言った
『ねえ、ノエル。危なくないかな……こういうところ』
セラが指したのは、テーブル。長方形で、一般的な形ではあるけど
そのはじっこは、直角。大人のすねがぶつかる分には少しの痛いで済むけど、もしも子どもがぶつかったら?
『——そうだな。何とか、しないとな』
転んでもおもちゃの山だから、少し泣くだけで済んだかもしれない。でもこれがテーブルの角だったら——危険
二人で家具屋でテーブルを選んだ時は、さすがにそこまで予見してたわけじゃないからな 仕方ないけど
『これだけじゃないよな。柱とか、棚の角とか、そういうところも対策しないと』
『うん、そうだね』
『でも、どうすればいい? もったいないけど、テーブルの角は切るとか?』
『う、ううんそこまでしなくても大丈夫だよ。ちゃんとそういうの、あると思うんだ』
——ってことで、早速クッション性のある素材を買ってきた
テーブルの角に取り付けるための、短いのと。柱や家具に貼るための、長いの
粘着テープを剥がして、長いのは適当にハサミで切って、で、角に貼るだけ
『へえ、こういうの、ちゃんとあるんだな。先人の知恵』
『ね。便利だよね』
『だー、うー』
――と、ごろごろしたりはいはいしたり、たまには立ち上がったりしてる子どもの動向を横目で追いながら、二人で作業をしてた けど
「あっ、ノエル! ハサミ!」
「えっ? あ!」
セラの大声にびっくりして指差す方に振り返ると、俺のすぐ後ろにいた子どもが——ハサミ、持ってた
さっきテープを切って、すぐそこに置いといたやつ 注意してたのに、一瞬の隙
「こら! 駄目だ!」
すぐにその手からハサミを取り上げる
何ともなくてほっと溜め息、けど
子どもは一瞬きょとんとして、俺を見上げて、それで——
「……っ、びゃあああぁぁん」
さ、再来……
でも、くじけるな。俺は、ここで負けられないんだ!(;`・ω・´) キリッ
「だ、駄目だ……これは、おもちゃじゃないんだ!」
「びええ、びゃあああああっぁぁあああ」
「危険! 怪我するんだぞ!」
「ああ〝ああひぎゃああびゃあああああうええああ」
言えば言うほど泣かれる……(´・ω・|||)ガーン
「よしよし、怒られちゃったね。怖かったね」
泣き叫ぶ子どもを優しく抱き上げるセラ。……ま、待て。怖かった? Σ゚д゚≡[ ]ズガーン
「でもね、パパが正しいんだよ? まだ危ないことは、危ないんだからね。触りたいかもしれないけど、これはもっと大きくなってから」
子どもを揺らして落ち着かせながら、セラは言ってくれた。色んな意味で、安堵 ε=(-。-;)フゥッ
子どもはセラの胸にしがみついてぐすぐすしたけど(大体そこはお前だけの場所じゃ以下略)、気を取り直したのか、すぐに泣き止んで笑い始めた。お前……切り替え早いな
「だーだーだーでーでーいーぎーあばばぶばあ!」
床に戻ると、意味不明な奇声をあげながら高速はいはい。お、俺でもそんなに速いかわからないぞ?
「うーーぶぶぶばあ」
今度はおもむろに立ち上がる
ぼて、と転んで、また立ち上がっての繰り返し
少しずつ動ける範囲が広がってきてること、きっと嬉しいんだよな 俺も嬉しい それ自体はすごくいいことだと思うのに
「わー! 駄目だ!」
昨日買ってきたばかりの柱補強用のテープを手にとって、巻きを伸ばして、口に入れようとしていた
*
「はあ〜〜〜っあ」
最後には床の上ですぴすぴ寝ていた子どもをベビーベッドに戻すと、なんだかぐったりした
「一仕事、だったね。今お茶淹れるね」
「あ、俺もお湯くらい沸かす」
「あ、ありがとう」
それにしても。なかなか寝なかったから、作業が終わるまでに本来の所要時間の2倍はかかった気がする……
ようやく寝たのは、全て完了する頃。正直、もっと早く寝てくれればな……という思いもよぎる
「最近少し生活リズムがついてきたから、昼間は寝なくなったもんね」
「まあ、な。夜泣きは少しずつ、減ってるかもな」
やかんを火にかける。セラは、お茶の葉をポットに入れる
「それにしても――気が気じゃない、な。何するか、予測不能。言ってもまだわからないし」
「ほんと、そうだよね……本当に、目が離せないよね。ハサミだけじゃなくて、いろんなものに興味持って。口に入れようとするから、大変で。興味持つのは、すごくいいことなんだけどね」
カップをキッチン台に二つ並べてやると、あとはソファで待っててね、とセラが言った
「……ああ」
子どもって――
何もできないところから、少しずつ色々なことができるようになってくる
寝返りができて、はいはいができて、つかまり立ちができて
そして、いろんなものに興味を持って これ何だって、あれ何だって
それが安全か危険かの判断は、まだできない
できることが増えても、本当の意味でちゃんと生きられるのは、まだまだ先で――その間は――
「危なくないように、ちゃんと……見ててやらないと」
「うん。そうだね」
セラはカップを二つテーブルの上に置いて、ソファの俺の隣に座った
ありがとって言って手に取ると、温かかった
「――真面目な話。たまに……うらやましくもなる」
「えっ?」
セラは首を傾げて、俺の顔を見上げた
「この子にとっては、父親も、母親もいる生活が、普通なんだなって思ってさ。こうして、大事に守られて。そうやって、人は育っていくんだなって。
そうじゃないと、何にもできない子どもが、どうやったって生き残っていくことなんて……できない」
だって、そうだろ?
人間の子どもは、しゃべることも、食べることだってまともにできない
ちゃんと世話をする人がいなかったら、とっくの昔にのたれ死んでる
でもそこまで言ってから、俺は、首を振った
「いや……ちょっと違う、かな。父親や母親がいないことだって、ある。セラも、そう。俺も――でも、他に世話してくれた人がいた。親かどうかじゃない。でも、何もできない俺に、いろんなことを教えてくれた人がいて――」
あの村にいた大人達の顔が、思い浮かぶ
ばあちゃん、周りの家の人たち――
自分が生きるのが、精一杯。そんな中でも、俺の面倒、たくさん……
「……、なんか、俺、いまさらだけど。こうやって……赤ん坊、守ってるとさ――
俺も、同じなんだって。一人じゃ生きられない俺を守ってくれた人が周りにいたから、今の自分がある。……そういうこと、再認識する」
「……うん」
セラは、静かに頷いた
「今までは、そんなふうに思ってなかったのにな。村のみんなは――巫女は大事にするけど、俺はそうでもないって思ってたし。それに、生き残りを探すかどうかでソリが合わなくてさ。なんで理解してくれないんだって、思ってた。
でも……こうして親の立場になって思い返すとさ、全然違う。あの時代は、子ども育てること、本当に命がけ。食べ物もない、いつ魔物に襲われるか。そんな状況で、一人で何もできない子どもを育てるって……本当、大変だったんだろうなって。でも、ちゃんと無事に育つように、あの時のみんなの精一杯の思いで、守ってくれたって、今は――心底、思う」
ずっと昔のことで、忘れてたけどさ——こういう時になって、急に思い出すんだ
「小さい頃、腹空かせて座り込んでた時も、あった。そしたらさ、これも食べなさいって——周りの大人たちがさ、自分の分まで食べ物くれたんだ。……自分の子どもでも、ないのに。自分だって食べるものなくて、元気出ないのに」
もしかしたら、自分がもう長くないからって思ってたのかどうか——そこまではもう、わからないけど
「……ノエルが無事に育つようにって、希望をかけてくれてたんだね」
「そう、だよな。なのに、前はその気持ちが重くてさ。俺だけに期待するなよ、とか、なんで俺なんだよ、なんて思ったりさ。本当はそんな風に、思っちゃいけなかったよな……」
ふう、と息をかけて、少し苦い紅茶を口にした
「悪いこと、したな」
「……悪いこと?」
「そうやって助けようとしてくれた人、助けられなかった。みんな……助けてやりたかったな」
ばあちゃんも。まだこの世界で、会ってない。他の村のみんなにも――
転生してるかどうかさえも、わからない
「悪く思うことなんて……ないよ」
いつも、俺を励ましてくれてる時みたいに、静かな、あったかい声
「……ノエル、がんばったんだから。希望、つないでくれたんだから。どれだけ頑張ったか、私、知ってるよ……? 悪く思ってるわけ、ないよ。私も……そうだったんだから」
そう信じるしかなくても
「それに、みんなもきっと……この世界のどこかで生きてるよ」
今は、お互いに その言葉に救われてる
「そう……だよな。それに――モグも」
あのお守りの名前を出すと、セラは少しだけ目を伏せて 小さく頷く
「……だね」
頷いて、カップをテーブルの上に、戻した
「……それにしても――子育てってさ、自分のこと振り返るもんだな」
「うん……そうだね。私も……お姉ちゃんのこと、よく思い出すんだよ」
「セラも?」
うん、と頷いた
「お父さんが最初に死んじゃって……お母さんまで死んじゃったのが、11歳の時。それからはお姉ちゃんが、ずっと守ってくれてた。自分のことはぜーんぶ後回しにして。稼げるからって、軍隊に入ってくれて……女の子で、まだ、14歳だったのに……私を、守ってくれてた」
それからセラは、小さく溜め息をついた
「私もそういう意味だと、お姉ちゃんに対して、今さらだけど……ごめんねって思う気持ち、あるよ」
「……そうなのか?」
伏し目がち ついその体をそっと、引き寄せる
「その時の私は……自分だけが普通に学校に行ったり友達と遊んでることが、心苦しくて。私ばかり守ってもらってるのが、辛くなって。——なんでお姉ちゃんはいないんだろうって、悲しくなって。自分のことばっかり。お姉ちゃんがどう思うかなんて、気にかけられなくなった。……寂しくて、助けが必要なのは……お姉ちゃんだったのにね」
セラは、腕の中で小さく首をすくめた
「お姉ちゃんも今はもう少し、わがまま言えるようになれてるといいな。私じゃ無理かもしれないから、それはホープくんの役割だけど」
そんなこと言うから、思わず首を振る
「……大丈夫。エクレールも、セラの思い、わかってる。前はただ、すれ違ってただけ。色々あったけど、今は、仲良しだろ? ホープの役割だなんて線引きしないで、セラもエクレールのわがまま聞いてやればいい。それに俺からすれば、エクレールは今だって充分わがままになった。もちろん、セラに対しても」
髪をなでると、うん、とセラは笑った
「お姉ちゃんのこと……大切にしたいな。――お姉ちゃんは、私が時を詠んで、死んじゃってからも……私の魂がいなくならないようにって、”棺"になって、ずっと私を守ってくれてた。今思うと、不思議な話だよね。本当にあったのかって思うくらい」
セラはそうやって、微笑むけど
でも俺は――
その話は、聞いたこともあったけど 聞くと、未だに胸の奥がちりちりして
「……セラ」
「え?」
「俺が、守れなくて――ごめんな」
身を起こして、セラのまぶたにキスをする
セラは、どこか不満そうに俺を見上げる
「……そういうこと言ってるんじゃ、ないのに。……ん」
耳にそっとキスすると、身体をよじった
「わかってるけど、でも……」
もうほどけたはずだったけど
うまくほどけきってなかった気持ちがどうしても、こうして顔を出す
嫉妬にも似た感情を、セラの姉さんに対して抱く自分が、馬鹿だと思うけど
そのまま、セラの身体をソファに倒す
視線が、交錯
「……ノエル」
そのうちに、セラの腕が上に伸びてきて、俺の顔に触れる
「そんな顔……しないで。ノエルは、たくさん守ってくれてるよ……」
引き寄せられたのか、俺から近づいたのか
そのまま自然と、唇が重なる
「ねえ。私……本当にいろんな人に支えられてて。でもやっぱり、家族は特別なんだなって、最近すごく思うの。
だから――家族は大切にしたいって、思うよ。お姉ちゃんだけじゃない。あの子も……それにノエルも、ね。私も、守るから……」
「……うん」
そして俺は、深くに沈んでいった――
「――……ふぎゃああああああ」
きゅ、急浮上<<( ゚Д゚;)>>ガボガボ
「な、なんだ!」
「……あ、泣いてる……?」
セラが、うっすらと目を開ける
そう、泣いてる。でもセラはまだ、そっとしておきたいし。ここは、俺が行くしかないところ。男の出番!
「だ、大丈夫! セラはここで待ってろ!」
大丈夫。俺の子育てクリスタリウムもだいぶ進んできてる、はず! レベルアップ、してる! 問題ない。いざ、戦闘開始……!(; ・`ω・´;)
続き
たくさんのしあわせ(前編)
最後はなんだか思わぬ方向に(以下略)
でもやっぱり、ノエセラだから書けることってあるなあと再認識してます……!
続くはずなんですがまだまとまってないので、また時間がかかるかもです(><)