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永遠の空の下 [空のように、ひとつに] (2)

前回のお話  [空のように、ひとつに] (1)  たくさんの人が、目の前を横切っていく。賑やかなかけ声や笑い声が、耳を通り過ぎていく。  ただ眺めてた。その光景を、どこか遠くに感じながら。 「もう行こう、かな……」  待ってても、会えるわけじゃないんだよね。本当に、はぐれちゃったんだよね。——大体、私が人ごみに飲まれちゃったのが悪いんだけど。  どうしても時計を取り戻したかったかっていうと、多分違う。なくなるのは悲しいけど、ものすごく何か思い入れのあるものでもないから。こういうのもなんだけど、また新しい物を買い直せばいいと思える。  でも……そうじゃなくて。  自分の物じゃないのに、追いかけてくれたから。  あったぞって言って、明るく駆け寄ってくれる気がしたから。  ほら、もうなくすなよって言って、笑って渡してくれる気がしたから。  そういう姿を……見たかったのかなって…… 「そういう人かどうかも……わからないのに」  でも、不思議と、そんな気がしてたんだ。勝手な想像かもしれないけど。  また、人の流れに乗ってみる。だけどさっきみたいな、この朝市を楽しんでた気分にうまく戻れなくて。ただ流されるままに、歩く。お店や人の動きを眺めながら——っていうより……  ……あの焦げ茶色の髪の男の子を探してる、のかもしれない。  ここの人なのかな。ずっといたら、会えるのかな。それとも、バックパッカーみたいな格好だったし、どこかへ行く途中なのかな。……だとしたら?  連絡先もわからないし、ここで会えなかったら、きっともう一生会えないんだよね……。  そう思ったら、どうしてか、心が沈んだ。  旅行中、一瞬だけ会う人なんてたくさんいる。——ほら、今朝話した駅員さんも、カフェの店員さんもそう。あの時だけ一言二言会話を交わして、その後また会うことなんてきっとない。ううん、旅行中だけじゃなくて、普段の生活でだって同じ。誰かと大学の授業で少しだけ一緒になる。誰かがノラカフェにお客さんとして来てくれて、接客する。それぞれの人生が縁あってほんの一瞬だけ重なって、——そして、また離れる。  そんなこと、よくあること。だからこそ、長く一緒にいられる人たちを大切にする。お姉ちゃん、お父さん、お母さん、それにみんな。普段なら、それについて特別にあれこれ思うことなんて、ないはずなのに。  なんで、こんなに気になるのかな。なんで、また会いたいって思うんだろう……  ぼんやりと考えながら朝市の通りを歩いていたら、露店は終わって、行き着いたのは大きな広場だった。  何本もの通りがぶつかっていて、中央には水瓶を持つ女性をかたどった大きな噴水。そのへりにはたくさんの人が座ってる。  周りを見れば、オープンエアのカフェが並ぶ。和やかに談笑してる人達、静かに新聞や本を読む人達、思い思いの過ごし方。一方は急な坂になっていて、道路と階段がある。こんな坂の上にも建物がたっていて、すごいなあと思う、けど。  ……今から、どうしよう。  朝市だって、結局途中から楽しみきれずに歩いてきちゃったし。今の気分のまま、どこに行けばいいんだろう? それとも別のところに行けば、気分も変わるかな。  それとも……  ここにいれば、見つけられるかな。  この広場には、いろんな通りが集まってる。だから彼が別の通りを歩いてたとしても、ここにいればその内に会えるかも——って……  そこまで考えて、首を振る。  ——私……何がしたいのかな。  そこまでして会って、どうするの?  会ってどうしたいなんてわけじゃ、ないはずなのに…… 「……あっ」  思わず、声が出る。少し先に、耳が隠れるくらいの焦げ茶色の髪。後ろ頭だけしか見えないけど、きっとそう。噴水の脇から、別の通りの方面に歩いていってる。 「あ……待っ」  気付いたら、走り出してた。その背中を、追いかけて。  やっぱり人がいて、うまく進めないけど。だけどさっき程の混雑じゃないから、ごめんなさいって言いながら、どうにか人と人の間をすり抜けて距離を縮める。  手が届くまで、もう少し。 「あ、あのっ」  手を伸ばして、その背中に触れてみて——  だけど振り向く前に、あ、違うかも、って思った。よく見れば、駅で見ていたバックパックは背負ってなくて、持っていたのは小さな皮のショルダーバッグ。違う……よね……。  実際振り向いたのは、二人の男の人。背中に触れた方の人は、髪型は似てるけど、顔は全然違ってた。もうひとりの人は……友人なのか、わからないけど。 「お、何だどうした姉ちゃん?」  うん、違う。本当に間違えた。こんな話し方でもなかったし……。 「そ、その……ごめんなさい! 人違いしちゃって……」  間違ったなんて、謝るしかない。突っ走ってこれだなんて……もう、私ってば……。  男の人達は、間違えたことについて怒ったりもしないし、ニコニコした笑顔で応対してくれた——んだけど。 「人違いぃ? そりゃひどいな」 「まあ、人違いでも何でも、お近づきのきっかけってことでどう?」 「えっ?」と言う間にも、男の人達は身体の距離を縮めてくる。 「こうして話ができたのも何かの運命! 偶然という名の奇跡を無駄にしちゃ、運命の女神が悲しむよ!」 「ってわけで、せっかくだし3人でどこかへ遊びに行こう!」  ……何だろう。確かに嫌な顔はしてないし、底抜けに明るいけど。ものすごく軽くて……  もしかして、あまり話しかけちゃいけない人達に話しかけちゃったのかな…… 「えっと……その……ごめんなさい、今、人を探してるので……」  嘘じゃない。別に待合せも何もしてないんだけど。 「探してるってことは、つまり探しても見つかってないってことなんだろ?」  ……何も言ってないのに、なんでわかるのかな。 「君みたいなかわいい子を待たせるなんて、酷い奴は放っといてさ!」 「その、いえ、今から迎えに行くところ……なので……」 「わかってないねえ。運命の女神が応援してるのは、まだ見ぬどこか遠くの誰かじゃない。目の前にいる俺たちってことだよ」  えっと……どうしよう。    *  朝市のある通りから抜けると、そこには大きな広場があって、横には坂があった。 「あ、登ろうかな」  この街は、結構起伏のある坂が多くて、楽しい。今までの旅の途中で訪れたのは、平坦な街が多かった。だけど俺のいた村は坂も多いし、それに毎日の日課として山に登ってたし。だから坂を見ると、つい登りたくなる。  それに、高いところから見る景色って好きなんだよな。山の上から村を見た時の、あの——視点が切り替わる感じ。今まで低いところにいて自分の周りしか見えなかったのが、俯瞰的に知ることができるようになって。あ、あの場所ってこっちから見るとこうなってたんだなってわかったりとか——  って、本当にそうできてたかどうかは、自信ないけどさ。村を出ることになるまでは、色んなことちゃんと考えられてなかったって……今となればわかる、明確に。自分の心の怖さ、覆い隠してただけだった。みんなに言われて、ようやくそれを自覚できて……  でも、大丈夫。みんながそれに、気付かせてくれたから。  ——ここは、どんな景色? 坂の上から登ってみたら、何が見えるんだろ?  そう思いながら登る。たまに立ってる家の横を通って、木や草の生えているのを見ながら。  実際上までは、そんなに距離がなかった。上にはちょっとした展望台。丸くごつごつした木の柵、それにベンチがあって、街の様子を見ることができた。  遠くを見れば、近代的な高い建物が建ち並ぶ。ガラス張り、先がとんがった形のビル。今まで見た村や街にはない感じ。ターミナル駅もあることだし、きっとこの街は地域一帯の中心的な役割を持ってるんだろうな。そういえば、空港も地図に乗ってたっけ。俺は使わないから、ちゃんと場所までは確認してなかったけど。  手前を見れば——今通ってきた、旧市街。茶色い屋根と白い壁の、古い家並み。  ある通りを見ると、小さな布張りの屋根がずらっと並んでいて。たくさんの頭が、そこの隙間を縫うようにして動いているのが見えた。 「あ、朝市。……やっぱり人多いな」  だけど、たくさんの人の頭を見てて気付く。金とか銀とか、黒とか茶色の髪はたくさん見えるけど、ピンク色の髪は少ない……というより、どこにもいない。ピンク色の髪なんて見たことないって思ったけど、世間的に見ても実際すごく珍しいのかもしれない。  ——さっきの子、どうしてるんだろうな。あの通りには見当たらないし、俺が見落としたってわけでもないみたいだ。じゃあ、やっぱり別の場所に行ったんだろうけど。  女の子一人みたいだし、しかもどっか抜けてるところありそうで……心配。ちゃんと前見て、歩いてるのか? またぶつかってないよな。また何か、落としてないか? 今度は、道間違えてたりしてないか? それか、変なのにひっかかってないよな? ちゃんと——  ——って。……心配しすぎ、か。こんな子ども相手みたいな扱いしたんじゃ、きっと彼女にも失礼……だよな。ちゃんと、大人なんだし。 「うん。心配しすぎ、よくない。大丈夫……ちゃんと、大丈夫」  確かめるように、言葉に出してみる。  でも、大丈夫って呟くごとに、心の中がざわついて。気持ちが、落ち着かなくなる。  "大丈夫だって——信じたかったのに——"  だけど……本当は……真実は…… 「……な、んだ」  ふらっとして、丸い木の柵にもたれるように、ひたいを乗せる。  まただ、この感じ。最近あんまりなかったのに。——気持ち悪い。なんで?  ちょっと落ち着け、俺——  そうして柵にひたいを乗せていると、下を向いた目に、さっき通ってきた下の広場の様子が映る。  朝市ほどじゃないけど、たくさんの人の頭。噴水をめがけてたくさんの通りが合流してる。金属の机と椅子が並んでて、そこに座ってる人もいれば、その広場を通り抜けていく人もいる。  ——その中に、見つけた。あの、優しいピンク色の髪。 「……あ」  小さいけど、ちゃんと見える。緩いウェーブのかかった髪を横で結んでて、クリーム色の服着てて、——それとやっぱりスカートは短い、し。間違いない。うん、目がいいって便利だな。  と、あれ? ……人と一緒にいる。男二人と話してる。距離感近いな。地元の知り合い? いや、旅行の仲間って可能性もあるか。勝手に一人旅だと思い込んでたけど、そうじゃなかったんだな。同伴者がいるなら、安心。 「……」  なんて言ってる場合なのか、俺?  楽しそうじゃない。男達は距離を縮めようとしてるけど、彼女の方は距離を保とうと後ろに下がっていて。遠目にも、さっきまでに見た柔らかい表情はどこにもない。  そうしてる間にも、男の一人が腕を掴もうとして、彼女の方が、それを払いのける。  何か、違う——  そう思ったら、足が動いてた。さっき数分かけて登った坂を、一気に駆け下りる。  広場に着く。何事かと思って振り向く人の間をすり抜けて、その3人をめがけて。 「——手を出すな! その子は、俺のエモノなんだ!」  男達と彼女の間に無理矢理割り込む。  男達は明らかに不快そうな顔。別に悪い奴らってわけでもなさそうだけど—— 「何だよ、お前は」 「横取りするなよ!」  ……横取り? 何だそれ? え、あ、エモノって言ったからか……なんでそんなこと言ったんだ俺。「い、いや、そういう意味じゃ」いや待て、ここで変に体勢を崩してどうする。 「ち、違うの! そうじゃなくて」  背中から声が上がる。彼女は俺のパーカーの裾を掴んで、横から顔を出していた。 「その、私……こ、この人を探してたの! この人を迎えに行こうとしてたの! だから、あなたたちとは行けません。ごめんなさい……」 「え、あ、う」 「(ごめんね、合わせて!)」小声の指示が耳に届く。  何だこれ。助けたはいいけど、どうすればいいんだ俺。必要なら戦う必要もあるかもって思ってたけど、予想外の展開。合わせるって何だ? 話を? どうやって? ど、どうにかしないと。 「あ、ああ。そういうこと。だから悪い、諦めてくれ」  そう言うと、男二人は舐めるようにぎらぎらと睨みつけた。緊張。ほんとにこんなので、どうにかなるのか?  しばらく睨み合って、男達は舌打ちして、言い捨てた。 「……何だよ勝てねえじゃねーか!」 「姉ちゃんがどうしてもっていうなら、応援してやるよ!」  そうして、意外にも大人しく男たちは雑踏の中に消えていった——  ……何だか、どっとした疲れ。よく見れば俺たちの周りだけきれいな円を描くように、ざわざわと人だかりができていた。  急激に恥ずかしくなって、俺は首だけで少しだけ振り向いて、彼女の手を引いた。「い、行くぞ!」 「ごめん騒がせた、何でもないんだ!」謝ると、周りの人達は微笑みながらまた通常の動きを取り戻した。  ——広場の隅の方まで早足で移動して、立ち止まる。振り向くと、彼女は少し息を切らしていた。あ、まずい。俺のペースで歩きすぎたかも。ごめんって謝るところ。だけど—— 「あ、あの、さっきは、ありがとう——」  彼女から聞こえた、感謝の言葉。だけど俺から出てきたのは、また違う言葉だった。 「さっきの、何」 「えっ?」 「さっきの、何!」  彼女はどこか驚いた顔で見上げる。 「えっと……その……いわゆる、ナンパ?」 「いくら何でも、俺でもわかる。なんでああいうの、まともに相手してる? 相手にするから、調子に乗る」  少し気まずそうな、申し訳なさそうな顔をした。 「その……ごめんなさい。ちょっと色々、間違えちゃって……」  間違えた? 色々と? 何をどこでどうやって? 「……あと、話せばわかると思ってたし」 「た、確かに今回はすぐどっか行ってくれたけど。相手次第じゃ、もしかしたら強引にしてたかもしれないんだぞ?」 「……だよね」  わかってるのか、わかってないのか。 「大体! あんた、わかってるのか。……そもそもあんたみたいなのが一人で出歩いてたら、危ないに決まってるだろ!」 「わ、私みたいなの?」 「自覚あるのか!」 「じ、自覚って……何かダメだったかな」  脱力しそう。 「あんたみたいにふらふらして危なっかしくて、そんなスカートで……男が寄ってくるに決まってるだろ!」  待て。なんで俺がそんなこと言わなきゃいけないんだ! 「私みたいなの……」 「そう!」 「似合ってなかったかな…」  崩れそうな身体を、何とか持ちこたえる。 「じゃ、なくて!」 「もしかして、短いかな……」 「み、短い! 正解!」 「そっか……短いよね」  スカートの裾をつまみながら、彼女は俯いて呟いた。 「納得?!」  何か違うと思いながらも、とりあえず問題だと理解してくれればそれでいい。 「そういうの、ないと思ったんだけどな……」 「その根拠のない自信は……どこから来るんだ?」 「私のお姉ちゃんもね、一人で旅行に出てたんだよ。でもお姉ちゃんには変な人が寄って来なかったっていうから、私も大丈夫かなって……」  呆れすぎて、息が吸えなくなるかと思った。 「あんたの姉さん、よっぽど強そうなオーラ出してたんじゃないのか? 少なくともあんたは、隙だらけ」 「でも、一応注意してたんだよ。護身術だって習ってたし、いざとなれば身を守れるかなって。筋もいいって言われてたんだよ」 「だとしても。そういうのがなかったとしても、前方不注意で時計落としたり、人ごみに飲まれてはぐれたりするだろ?」  本当にそうだったかどうかはわからなかったけど、きっとそうだと思って言ってみた。 「そ、それは……その、そうだけど」  ……事実なんだな。 「大体腕時計なんて、なんで落とす? ずっと腕に付けとけば、落としようがないだろ?」 「だって……そういえば時差調整しなきゃって思ったら、ぶつかって、落としちゃって……」 「で、ついでに人ごみに流されてはぐれて、変なやつらにひっかかったと」 「その……それは……私」  だけど、とうとうその後の言葉が続かなかった。小さい反論が、そこで止まる。何かを言おうとして、だけど俯いた。  俺も……いじめすぎたのかな。ちょっと、反省。 「——時計はさ、探したけど、ごめん。どうしても見つからなかった」 「ううん、私こそ探させてごめんね。誰かが拾って持って行ったかもしれないし、仕方ないよ。落とした私が悪いんだし」  どこか、元気のない声だった。  違うんだけどな。……別に俺は、そういう顔にさせたかったわけじゃなくて。 「……うーん」  はあ、とゆっくり息を吐き出す。 「——もういい。あんた、旅行者? ……なんだよな? 多分。駅でも会ったし、何となくこの街に不慣れそうだし」 「そうだけど……」 「あんた、危なっかしいからな。3回も会ってたらどうせまた会いそうだし、ついてくよ。旅は道連れって言うし」 「えっ?」  彼女は、ひっくり返りそうな声を出した。 「俺も一人旅しててさ。それも楽しいけど、誰かがいた方が楽しいなって思ってた。あんたも安全だし、便利だろ? 俺ボディガードするし、荷物持ちもしてもいいし」  悪い提案じゃないと思った。彼女はひとりでいたら絶対危険。俺がいれば、彼女も安全。俺も安心。それに楽しい。一石何鳥?  ……にも関わらず、彼女は手を軽く握って頬に当てて、どこか訝しむ目を向けた。 「えっと……その……一緒に?」  何だ、その反応。頭の中を、ぐるっと一回りさせて、考える。——あ。 「あれ? もしかして——俺って……不審者?」  彼女は、目をそらして、横を見て、俯いた。 「うん。時計も探してくれたしナンパからも助けてくれたけど、あなたのこと、まだ全部信じたわけじゃないよ? だってあなたこそ、ナンパじゃない? さっき私に気をつけろって言ったのに、今はついていくなんて。あなたに言われて、私も学習、したんだ」 「く、悔しいけど、妥当……——じゃなくて! ち、違う! そ、その、俺は。純粋にその方がいいって思ったからで……その、誠心誠意!」  彼女は、こらえ切れないように吹き出した。 「ふふ、わかってる。そういう人じゃないんだよね。言われっぱなしだったから、少し言い返したくなっただけなの」 「……おい」  何なんだ。さっきまで俺の方が色々言ってたはずなのに、調子狂うな。 「いや、でもちゃんと学習してくれたなら、逆に安心。誰でも彼でもついていったら、それこそ困るからな。——でも」  でも、俺は—— 「俺は……守るよ」  言いたくて、言った。それはどこからか出てきた、心からの気持ち。そうすれば、彼女も安心して旅行できるだろ、って。  なのにどうしてか、さっきみたいな苦しい気持ちも一緒になって出てきて。 「……その」  彼女の声ではっとして、何とか元に戻る。今日は何か、俺も調子変だな。  そして彼女は彼女で、それっきり——今度は、黙ってしまった。 「あれ……沈黙?」 「う、ううん……」  小さく首を振って、小さく呟いた。 「……ありがとう」  首を傾げて、微笑む。 「さっきもこれからも……本当に、ありがとう。じゃあ、これからよろしくね。えっと……あなたは」 「あ、そういえば……名乗ってもなかった」  うん、まずはそこからだよな。妙に、自己紹介が済んでた気にもなってたけど。 「俺は、ノエル。ノエル・クライス」  そう名乗ると、彼女はどこか不思議そうな顔で首を傾げて、俺を見上げた。 「……それだけ?」  それだけって言われてもな。それじゃ足りないか? でもこれ以上何て自己紹介すればいいのか、わからないし。 「自己紹介、下手でごめん。……それで、あんたは——」  あんたの名前は、って聞こうとして。  だけど、聞く、ということが出来なかった。 「——セラ、」 「えっ?」  その名前に。顔に。声に。  俺は—— (3)に続く Illustrated by ほたぴんさん
俺は…何なんですかね!(←書き終わった時も同じこと思ったのに直してない…) いやーノエル編セラ編合わせると、やっとです…! ノエルとセラー! 今まで自分の書いたのじゃ楽しめないと思ってましたけど、あまりにLRで渇望しすぎたのか十分楽しんでます。笑 俺のエモノなんだのシーンは13-2の本編と同じように上から飛び降りてきて……というのを一瞬考えましたけど、一応現代でそれやると骨折どころじゃすまないなとか思ってしまってやめました(笑)とりあえず上から見てたよというところで収めようかと… そしてたかせさん、お忙しい中颯爽と現れるノエルを描いていただきありがとうございます…!眼福…。なのにかっこよくなりきれてない(?)ノエルですみません。笑 そしてお読み頂いた皆様、ありがとうございます!! ノエセラの関係が書いてるうちによくわからなくなってきてますが…ご容赦ください…(^^; ※3/10追記1 スカートスカート言っていますが、どれだけ短いのかはこの設定画をご覧頂ければと思います…(^^)いやでも13-2公式と比べたら相当ソフトなんですが。笑 たかせさんの画廊 ※3/10追記2 ほたぴんさんより、お読み頂いてから絵を頂きました…!上記に載せさせていただきました!ありがとうございます!!(><)

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