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子育て奮闘記 〜 しんじはじめた日

×こどもの日で○ろくさん@gansuns_6からの派生妄想で、いろいろすっ飛ばしたノエセラ子育て奮闘記。 ※シリアス風は最初だけ ※LRFF13ネタもありますのでご注意 ※色々すみません 「……怖いんだ」  いつかそのうちって、それを望んでいたはずだった、けど 「ずっと——命、生まれない世界にばっかり、いたから。ちゃんと命、生まれたところ……俺、わからなくて」  一番不安なのは、目の前にいる相手なのに  喜んでやりたいのに、大丈夫だって安心させてやりたいのに——……俺が、不甲斐なくて  脳裏に、よぎった 遠い遠い昔の、記憶  少しずつ薄まってきている気もするのに、まだ棲み付いてる  クリスタルの砂にまみれた、村 子供が育たない……生まれない   お腹の中の赤ちゃん共々死んでしまった、女の人  そして、あの500年の間も——  セラが、エトロが、死んで 時が、止まって  命の動きが、止まった  子どもは、いつまでも子どもの姿のまま  母親のお腹にいる子どもも——いつまでもそこで眠ったまま、世界に出てくることはなかった  そうして俺は——  人の死に直面することは、たくさんあっても  生の誕生をこの目でちゃんと見たことは、全然 ……だから 「大丈夫、なのか……?」  眉尻を下げて、俺を見つめる目  不安、かな そうだよな 俺が、こんなにも頼りない  腕を伸ばして、抱き寄せる  この細い身体の中に、今はまだ小さな命があること  でも、そのうちに、大きくなっていって 抱え切れない負担になるかもしれない 「なあ、セラ、いなくならない? また、いなくなるのは……嫌だ」  それが、何より怖いことに繋がるんじゃないかって——  背筋が、冷える  今は、こうして温かいのに またいつか—— 「……大丈夫だよ。いなくならないよ」 「……なんで、そう言える? 保証、ないだろ」 「そう言うなら、いなくなる保証だって、ないよ」 「そう、かも、だけど。でも前は……——っ」  言いかけて、何とか喉元で止める 「……ごめん」  あんなことと一緒にされて、よく思うわけないのに 「——あのね、ノエル」  セラは、凛とした声  思わず、その顔を見た 「今は、今までとは違うんだよ。この世界も、ノエルも、それに私も。だから——」  セラはゆっくりと腕の中で顔を上げた 「——今度こそ、私を信じて。それと、赤ちゃんのことも」  今までも、見てきた "決意"のある、顔 迷いのない、瞳  俺が、弱くなってる時 ——そういう表情をする時のセラに……何度も、引っ張られたっけ 「男の子だったら、きっとノエルに似てるね。まっすぐな目をしてて。好奇心旺盛で。負けず嫌いで。柔軟だけど、強情で」 「ご、強情? 俺が?」 「だけど、しっかりしてて、誰よりも優しいよ」 「そう……なのかな」  何となく首をひねったら、セラは笑った 「女の子だって、きっと同じだよ」 「……女の子なら、セラに似てるんじゃないのか? 優しくて、温かくて、たまに変なこと言って」 「変なこと、じゃないよ」 「悪い意味じゃない。それに……か弱そうだけど、芯が強くてさ。たまに、強情だよな……って、あれ?」 「ふふ、どっちにも、似てるね」 「……どっちにも」 「だって、二人の子供なんだから』   不思議な、大きな力で いつの間にか 「……二人の」  うん、と頷いた 「ねえ、ノエル。ノエルの育った時代も、その後も……"命が育つ"ところ、見れなかったんだよね。命が失われたり、止まったり。そんな時代にばかり、ノエルはいた。  でも、今は違うんだよ。命、育っていくんだよ。他でもない、私たちから生まれる……新しい、命だよ。私——すごく、嬉しい……」 *  赤ちゃんが、できたんだよ  そう告げられてからは――俺も何とか、事態に追いつこうと努力したけど 「……あのさ、セラ」 「なぁに?」  クローゼットから聞こえる、楽しそうな声 でも 「……動きすぎじゃないか? もう少しじっとしてないと。大体、もう寝る時間だし」  もう夜だし、寝てもいい時間なのに。セラはまだあれこれと動いてる 「う〜ん、だって明日お姉ちゃんが来るんだし。色々準備しておかなきゃって」 「それなら、俺やるから。セラは座ってて」  そう言って近づくけど、セラは声だけで答える 「ありがとう。でも、ノエルには難しいかな?」 「難しい? なんの準備? 大体、もう終わったはずだろ? ベッドとかさ」  そう。そういうのは今日の昼間、俺が全部やったはず  なのに他に、何が必要? 「でもほら、服とか、パジャマとか、色々と」 「――ってさ。セラの手伝いに来るんだろ? ライ――エクレールだって、おまえにそこまで準備、させないだろ」 「でもお姉ちゃんだし……一応って思って」  手伝われてるのは、どっちなんだ? 「それじゃ、本末転倒。セラは今は、大事な時期。妊婦、なんだぞ」  セラは、いくつか服を抱えて、ゆっくりと立ち上がった  首を傾げて俺を見て――また、テーブルの方に歩く  もうお腹も大きくなってきて、動きづらそうにもしてるのに。だったら静かにしてればいいのに——と、つい思う 「大丈夫だよ、そんなに心配しなくても。安定期なんだよ?」  ……何なんだ? この温度差 「だって、すごく具合悪そうにしてただろ! 何も食べられないし、顔色も、すごく悪くて――」 「だけどもう、つわりの時期は終わったんだよ」 「でっでも、動きすぎたらまた悪くなるかもしれない」 「今はね、少しは動いたほうが身体にもいいんだよ? お姉ちゃんのために準備したからって、悪くなることなんて――あ」 「……セラ!」  食器を運びながら——テーブルにぶつかって、よろけたから。思わず駆け寄って、その身体を支えた 「ほら。言ったそばから、これだ。絶対安静」 「もう。少しよろけただよ。大丈夫」 「ごめん、俺が、心配。産まれるまでは、危険なことするな。明日エクレールが来たら、一緒にやればいい。今日はもう休む時間」 「はぁい」  服をテーブルの上に置いて、セラはお腹を押さえながらゆっくりとベッドの方に歩く  セラがベッドに腰をおろすのを見て、ふう、と溜め息  ひとまず安心 ――でも、また言い過ぎたかな  大丈夫だ、って言われても、どうしても気になって 「……ごめんな、セラ」 「ん? どうしたの?」 「いやその――いつも、うるさくて」  セラは、きょとんとした顔で俺を見上げて――そして、ふっと笑顔を見せた 「ううん……私こそ、いつも動いちゃってごめんね。ノエル、心配してくれてるんだもんね。——ね、あかちゃん、パパ、やさしいね」  セラは、横になって、大きいお腹をゆっくりと撫でた 柔らかい表情 「ノエルも、触る?」 「う、うん」  灯りを落として、隣に横になって――そっと、手を伸ばす  もう、何回も触ってるけど 今もまだ、どこか緊張する 「……大きくなってきたね」  セラは、幸せそうに呟く  その細かったお腹は、ずいぶんと前に張り出してる  確かに、そこで成長してるんだ 一日一日、少しずつ 「——そう、だな」  確かに時間は動いてる  今はもう、生命が生まれない、育ちもしない、そんな世界じゃなくなったのだと  それは――日に日に、実感してる けど  だけど まだ、俺は 「……ねえ、ノエル」 「ん?」 「やっぱり……まだ、怖いかな」  いつの間にか そのお腹に触れた手に、セラの手が重なってた 「——いや、その……なんだ」  いつの間にまたそういう顔してたんだ、って  つい、言い訳を探した 「まだ現実感……ないのかもな。顔見るまでは——まだ、わからないところもある、のかな……」  セラは、そっか、と頷いた 「女の人は、赤ちゃんができた時点でもう実感湧くけど。男の人は、産まれるまでは実感湧かないってよく言うもんね」 「そ、そんなもん?」 「そうみたい」  セラは笑った  ……相変わらずこういうことで、セラに心配かけてるな 俺  男って、弱いな ――って、俺が弱いだけか 「ごめん、その……」  そう言いながらも、頭を掻いた 「セラとこの世界を、信じてないわけじゃない、けど、ただ……――俺の心の、せい」  はあ、と息を吐いた 「このままじゃ、明日はエクレールじゃなくて、ライトニングかもな……」 「? どういうこと?」 「ふざけるな。お前、そんなに不甲斐なくてどうする。やっぱりお前にはセラを任せられない。出て行け、私が面倒を見る。……俺、恐怖」 「もう、大丈夫だってば」 「……大丈夫」  深く息を吐き出して、また吸った  ――今は、あの死にゆく世界でも、混沌に溢れた500年でもない  あたらしい、せかい  いろいろあるけど それでも――ちゃんと、みんながいきてるせかい  だから、大丈夫  セラは、今度こそちゃんといる いなくなったりしない  この子どもも―― 「大丈夫、大丈夫……」  そう言い聞かせるようにつぶやいてると―― 「えいえいっ」  ふいに、顔をつんつんと指された 「な、何」 「もう。顔、緊張しすぎだよ」 「そ、そうかな」  いつも通りの、セラ 「ね、ノエル。少し……ゆっくりしよう? 私も、あんまり動きすぎないようにするから。ノエルも、ね?」  そうしてセラは、そのお腹と俺の手を、ゆっくりと包むように撫でた  あったかくて、涙が出る 「……うん」  このあったかさが、数ヶ月先もちゃんと続くんだ、って  ちゃんと、心にわからせたい 「……あれ」 「――あ」  声を上げたのは、二人同時だった  何か、手のひらに、とん、って感触が――  ……これって 「今……動いた?」 「ふふ、うん! 元気な赤ちゃんだね、きっと」 *  そうは言っても やっぱり後悔、した  ――怖かった  セラの苦しそうな顔が、声が  信じて、と言われたけど  信じるって、苦しい  信じても何もならなかったこと、たくさん  やっぱりこれも、間違いだったんじゃないかとか そんなことまで  ただ、祈るしか  でも、何に祈ればいいのか  ――それでも……  あたらしい世界を本当に信じ始めたのは  もしかしたら、その時からだったのかもしれない  ふぎゃ、ふぎゃあ、って まだ弱々しいけど 精一杯の声が、耳に届いて  俺の中の全てを、揺さぶってくるような  わあ、と部屋の中が、喜びの空気で満たされる 「――おめでとうございます。お母さんも赤ちゃんも、元気ですよ。安心してくださいね」 「お母さんに、声かけてあげてください。……お父さん?」  泣き声に混じって、何か、言ってる気もするけど 「体重は、3102g。元気な男の子ですよ」 「もう少し、背もたれ起こしますね。大丈夫そうですか? ――ほら、お母さん。赤ちゃんですよ」 「――お父さん? ……大丈夫ですか?」 「さっきまで、ほんと青ざめてて。でも、嬉しすぎてびっくりしちゃったんですかねえ」  わからないけど 足が固まって、動かなくて 「……ノエル?」  まだ少し、弱々しいけど  セラの声で、名前を呼ばれて 「……あ」 「こっち……来て」  やっと足が、ふらふらと動き出した 「……セラ」  さっきまで見たことないくらい苦しんでたセラは、少しずつ、息を落ち着けて  顔こそ、少し疲れてるけど——  でもそれ以上に、慈しむような、優しい笑み 「産まれた……ね」  その胸には、今産まれたばかりの赤ん坊 「……産まれた」  赤くて、小さくて、しわしわ 目は、うっすら  不思議。……さっきまであんなに泣いてたのに。セラの胸に抱かれたら、もう泣き止んで、うとうとしてる 「ね……触ってみて」 「さ、触る? 俺が触っても、平気?」 「ええ、大丈夫ですよ」  そうは言っても、どこを触ればいいのか、戸惑う 「こ、こうかな……」  背中を、触ってみる ――すごくあったかい  ちゃんと、息もしてる  息に合わせて、身体がゆっくりと上下する  ……小さいけど、ちゃんと生きてる 「……」  横に伸びた、短くて細い腕  俺と比べたら、まだほんの小さな、小さな手  柔らかい その手の平にそっと指を差し出す  静かに、でも、確かに握り返すような感覚、が 「……あ」  まだ小さくて、庇護を必要とするもの  だけど小さくても、その輝きはまっすぐに、伸びていくようで 「ありがとう、セラ……  産んでくれて、ありがと……」  前が見えなくなるくらい、泣いた  産まれたんだ  大切な、命が 他でもない、ここに  ――それからは、格闘の日々 次の話 さわがしくていとしい
いろいろすみません、なノエセラ子育て序章でした! 次回はもう少し楽しい雰囲気かと思います(^^)

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