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Echoes of You (4)

すごくシンプルな言葉 ※ファミ通後日談小説ベースです。 Echoes of You (3)(全部、忘れてしまえば)へ 『ノーエル!』 『……セラ?』  懐かしくて、切ない気持ちにさせる声が聞こえて  思わず俺は、その影を追う  ふいに浮かんだのは、随分昔のこと 『あなたのこと、まだ信じたわけじゃないからね』  最初はそんなこと言われたっけ——  でもそんなこと、俺にとっては大したことなかった  みんな苦しみながら死んで——人類最後の生き残りになった俺  飢えても、転げ落ちても、誰も、いない  何もできないまま、もう死ぬんだと思ったのに……  ——どす黒い暗闇に光を投げかけてくれたのは、セラだった  俺の生きた時代にはなかった、太陽に照らされ輝く海辺  セラは、たくさんの子供たちと、笑い合ってた  それまでは、未来なんて想像できなかったのに  急に、色鮮やかなイメージが湧いた  "みんなが生きてる未来"  生きる希望と、目的を与えてくれた  一人きりだった俺に、一緒に歩く仲間ができた  セラ、モーグリ、そしてホープ 『一緒に、未来を変えよう』  ——握られた手は、温かかった  いつだってそこにいて、一緒に戦った 『ノエルの代わりは、どこにもいないんだから!』  終わらない夢の闇に吸い込まれそうな俺に、必死に伸ばされた手  そんな人……初めてだった 『ノエルに、夢じゃない、本当に幸せな未来を見せてあげたいから——』  ——だから――  いなくなったことが――……ただただ、つらくて  俺のために、何にもならない未来のために——セラを、犠牲にしたから  俺は、どうすればよかったのか  何をしたらセラを助けることができたのか そして、世界を崩壊させずにすんだのか  無価値な俺の未来のためにセラが死ぬなら、俺の未来なんて、要らなかったんじゃないのか  俺が死ねばよかったのに  そんなことばかり考えて  俺は——ただ  セラが俺に光をくれた分、セラにも光の中で、笑っていてほしかった  ……それだけなんだ  なあ、……セラ  俺は、誰よりもセラに幸せでいてほしくて……  その気持ちしか……なかったんだ  なあ、セラ 『……ノエル』  手を伸ばした影が、振り向く 『っ、……セラ!』  でも、セラは—— 『なんで? セラ、なんで泣いて……』  セラが泣いてると、俺まで涙が出てくる  なんで?  なんで泣いてる?  何がそんなに悲しい?  何がそんなに苦しい?  そんなセラ、見たくないのに  なあ、セラ、頼むから、 「——……セラぁ!」 「——ノエル・クライス!」 「えっ? ——……ぃてっ!」  後頭部に、どん、と重い衝撃  げらげら、くすくすとした笑い声  がばっと上半身を起こすと、分厚い辞書を持って、怒った顔をした教師が目の前に立っていた 「私の授業で、しかも一番前の席で居眠りするなんていい度胸ね、ノエル・クライス……後で来なさい!」 「あ、ごめん、先生……」  ……授業中に、居眠り?  ——なんだ、夢、か  俺が、こんなところで隙を見せるなんてな  とはいえこの時代、この場所じゃ、命を狙われる危険も少ないけど  いや——わかってる。そんなことが問題なんじゃなくて、だ 「お前、大丈夫かあ?」 「居眠りなんて、珍しいね。いつもはすごく真面目に授業聞いてるのに」  授業が終わったら、クラスメイトから話しかけられた 「あ……ああ。自分でも、ちょっと不思議」 「まあ、気楽に怒られて来いよな。大丈夫、きっとすぐ終わるだろ」  そうやっていつも、心配してくれる奴が——  時が止まったあの時代、俺を気にかけてくれたのに、一緒に行動したせいで魔物に襲われて死んだ奴に——すごく似ていて  向こうは、そのことを覚えてない でも、俺だけが、思い出して  どうしても、どうしても 陰鬱とした気持ちにさせられる  なぜか、最近は特に 「夏休みを前にして。最近、たるんでるんじゃない?」  先生はさっきよりは落ち着いた顔をしているけど、それでも厳しい視線を投げ掛けた  でも、否定はできない。自分自身、そうだと思ってる 「……そうかもしれない」 「——意外ね。そんなにあっさり認めるんだ」 「いや……実際、そうだと思うから」  先生は、溜め息をついた 「まあ、あなたの場合は——私も、なかなか強く言えないけど。普段から頑張ってるのも、知ってるし。今も、夜にバイトしてるんでしょう?」 「それは……そう」 「でも、学費の補助は出るようになったし、楽になったはず。あなたが授業中ぼうっとする時間が増えたのは、最近のことだし。  それ以外にも最近、気になってることがあるんじゃないのかな」 「……」  何も言わなかったら、先生はもう一度、溜め息をついた   最初見せてた厳しい顔は、もうないけど 「バイトも大変で、他に気になることもあって。やむを得ない事情もあるのかもしれないけど。  でもそんなんじゃ、バイトでだって怪我しちゃうかもしれないし。それに何より——成績、落ちちゃうわよ」 「! それは……困る」  勉強すること  それは、ばあちゃんと、そしてセラと交わした約束の一つだから—— 「じゃあ、どうするの?」 「……ごめん。ちゃんと、気をつける。成績は、落とさない」 「それなら、いいけど」 「ああ。もしまた同じようなことがあったら、注意してほしい」  実際。ちゃんと勉強してるって胸を張って言えなきゃ、合わせる顔もない——  そんなことを、ふと思う  別に、会うって決まったわけでもないのに…… 『全員見つかったら今度みんなで集まろうぜ!』  こないだスノウは、そう言ってた  あいつのことだから、言っといて実現しないなんてことないと思ってるけど 「いつ……集まるんだろ」  連絡が来ないってことは、まだまだ時間がかかるのか  誰が見つかってないんだろ  待つしか、ないのか  俺は結局、セラに連絡先を伝えるようにスノウに言えなかったわけだし  スノウより前にセラから連絡が来ることなんて、ないんだろうけど  ……こんなに気になるなら、ちゃんとスノウに頼んどけばよかったな——  後悔先に立たず、ってやつか……  はぁ……—— 『今は、一人でいたいんだってよ』  スノウからそんなこと、聞くわけないって思ってた 『わかるのは、今、セラは過去に苦しんでるってことだけだ』  その日からその言葉は、意識するしないに関わらず——頭の中で、何度も、何度となく……繰り返されて  ぼんやりとした泣き顔のセラのイメージだけが、脳裏に浮かぶ  ——寝ても 醒めても 「——大丈夫?」  ユールの長い髪が揺れて、ドアを開けた俺を見上げる 「大丈夫、って……何が?」 「何だか、疲れてるみたい」 「あ……いや、ごめん。ちょっと、考え事してた」 「考え事?」 「いや、えっと、その……勉強のことで」  それも、間違いじゃない  成績落ちるのは、絶対に避けたい  もっとちゃんと、勉強しないと 「そうなんだ。——最近、いつも少し疲れたようにしてるから、心配。忙しいし、よく眠れてないのかなって」  ……しっかりしろ、俺  先生に言われるだけじゃなくて、ユールにまで心配させて——どうするんだ? 「……そうだな、ちょっと睡眠不足なんだろうな。今日はバイトもないし、早く寝るさ。たまにゆっくりすれば、すぐ治る」 「そう。……よかった」  いくらか、ほっとした顔 「ユールは? 今日、学校どうだった? 楽しかったか?」 「あ、うん!」  心配の色は身を潜めて、落ち着いた笑顔で、だけど嬉しそうに話し始める 「えっとね、今日は先生に誉められたの」 「へえ、なんて?」 「この前読書感想文を書いたんだけど、それがすごくよかったって」 「すごいな、ユール」 「私も、楽しみながら書いてたの。だから、すごく嬉しい。  それと、帰りにお友達と一緒に……——」  ——ユールも、少しずつ今の時代に慣れてきてるよな  人のいなくなった時代にしか生きてなかったわけだから、俺以上に、どう慣れていくのかと思ったけど、心配無用だった  それに、時詠みの力も、もうない  命を削られることなんて、もうないんだ—— 「……」  ——あの村のみんなの、大切な存在  小さい頃から、守りたくて、でも、守れなくて 『また、会えるから』  悲しそうな笑顔で言われた、幻みたいな言葉  それを、信じきれなかった時もあったけど  ……また、会えた 何百年もの時間を、かけて  そしてこうして、あの死にゆく世界では見れなかった、無邪気に笑う姿を見て  何よりも——嬉しい、と同時に  ずきん、と痛む  "……カイアス、ごめんな"  学校での出来事を楽しそうに話すのを聞いて、相づちを打ちながら  心の中だけで、呟く  あの時に見た、たくさんのユール  きっとあれは、今までの歴史の中で時詠みの巫女として命を落とした、ユールたち  ユールは、多くを語らない 俺もあの時は、よくわからなかった  でも、今冷静になってみれば、わかる  カイアス、あんたは  時が止まる前も、時が止まった後も  ずっとユールの魂に——寄り添ってたんだよな  だからこそ——  あんたも一緒に、いられたらよかった  ユールがこうして、無邪気に笑える姿 あんただって、見たかったはずだよな  闇の世界から見守る、なんてもんじゃなくて、  こうして、同じ世界に生きて  どちらかが不死で、どちらかが早逝なんてもんじゃなくて、  こうして、同じ速度で  ——そしたら、もしかしたら  本来のあんたの姿、見られたのかなって  俺には、いつも厳しい顔しか見せなかったけど  本当は、あんただって——無邪気に笑ってた時期も、あったんだよな?  あんたの笑った顔も、見たかった 『俺は、あんたとユールで、三人で生きていきたいんだ! もう三人しか、いないんだ! あんたを殺すなんて、無理だ!』 『覚悟を持て。覚悟がなければ…終わらせることはできない。君も辛い思いをする』 『何の覚悟だよ! 俺は……嫌だ!』  村人がみんな死んで、三人だけで残された時も  いくらあんたが、死にたがってても。死んだ奴らの分まで生きようなんて気持ち、これっぽっちもなくても  それでも俺は、あんたに、生きていてほしくて 死んでほしくなくて  ——セラと一緒に戦ったあの時も、あんたにとどめを刺すなんて、できなくて……  だけど 『違う! ユールは生きるんだ! 生きていかなきゃ駄目なんだ!』  ユールに気付かれないように、小さく、溜め息  ——心の中の、もう一つの大きな後悔  あの時……ライトニングが来る前の、ユールを助けたいって気持ちだけが、前に出て  なんであの時、俺は  あんたも一緒に生きるんだ、って言ってやれなかったんだろう……  新しい世界で、一緒にユールを守るんだ、って 『だが、死の神は必要だ』  ……結果なんて、わからない  カイアスが死の神にならなかったら、新しい世界だって成り立たないって言われるかもしれない  でも、他の方法が考えられなかったのか?  セラを亡くした時、散々——後悔しただろ? ってさ  それに、あの世界を壊したのもカイアスなんだから、死の世界が妥当だなんて言うやつもいるかもしれない  でもそれを言うなら、俺はどうなんだ?  過程がどうあれ、俺だってあの世界を壊した一人で カイアスが罪だと言うなら、俺だって同じ  俺が生きるなら、カイアスにだって生きる権利はあった いや、生きるべきだった  それに、カイアスは、ただ——ユールのために、しただけで  ——あんたも一緒に生きるんだ、って言ってやれるのは……俺だけだったのに  一本の芯をまっすぐ貫き通したカイアスに比べたら——本当、俺って……口だけで、中途半端 『生きてれば、失敗したって、やり直しはきく』  ごめん スノウ  その言葉、すごく心強かったけど  やり直しも効かないものだって——やっぱりあるんじゃないかって…… 「……ル?」 「——え」  聞き逃しそうな声  顔を上げると、いつの間にかユールの笑顔が消えて、眉尻が悲しそうに下がっていた  ちゃんとユールの話、聞いてるつもりだったのに 「——ごめん、その……」  ユールのせいじゃないのに  ただ単に、俺が情けないからで  でも——なんて言えばいいのか、わからない  カイアスのことだって ユールが話さないことについて、俺が何を言える? 「……ごめんな。やっぱりちょっと俺……疲れが溜まってるんだな。早めに、休まないとな」 「そっか。うん……そうだね」  そうしてユールは、儚く静かに、微笑む  ——同じ会話、何回したんだろう  ……ぐるぐると、自分の情けなさを露呈する 『今、セラは過去に苦しんでるってことだけだ』 『……なんで』  なんで、って?  なんでかなんて、答えられたら、どんなに楽か  じゃあ、自分のことは答えられるか?  結局俺だって——同じで  セラのおかげで、カイアスのおかげで、みんなのおかげで——今、ユールと一緒にいる  たいせつなもの  それに、俺の力じゃなかったとしても——みんなで勝ち取った、新しい世界  それでも、いろんな問題がある 思わず顔をしかめたり、……嫌になるくらい、涙するものも  世の中そんなに甘くないんだってさ、カイアスに言われてるみたいで  だけど——  ……人の死に絶えた世界と比べたら、……いや、比べるまでもない  いくら苦くても、  やっぱり、——平和なんだって 幸せなんだって  だから、そんな新しい世界で、ちゃんと生きてかなきゃ、生きていきたいって思うのに  実際、少しずつ慣れてきてる  狩りはもうしなくなったし、魔物とは戦わないけど  それ以外に生活する手段を得た  学校も行ってる  そう思うのに  何かが、絡まったまま、膨らんで、動けなくなる  自分ではどうすることもできない  なあ、セラ  セラも、こういう気持ちなのか  過去のこと もう、終わったこと  そう思えばいいだけの話なのに  新しい世界、ライトニングもいて、スノウもいて、ホープも、サッズも  だから 今を生きればいいって、頭ではわかっていても  こんなにも、狂おしいくらいの、痛み—— 「————……ラ」  急に——いてもたってもいられなくなって  別に、どうしたいってわけじゃない  今更俺なんかが、セラにしてやれることなんてないって思ってたはずなのに  急に、声を聞きたくなって 話をしたくなって  セラにとっては、迷惑かもしれないけど それでも  あ、けど——連絡先、知らない  いや。知らないなら——ちゃんと、聞けばいいだろ  あいつに聞くのも、変かもしれないけど  今の俺には、そんなこと聞く相手は、スノウしかいないんだ  ——スノウにも、ちゃんとわけを話そう  セラと、ちゃんと連絡取りたいんだって 「……電話。それと——」  この前スノウにもらった、連絡先のメモ  カバンの中に、いつもしまってある  その電話番号にかければ、スノウが出てくれる  ちょっと夜遅いかもしれないけど——まああいつなら、何時でも大丈夫だろ  ツツ、ツツ  機械的な呼び出し音が、耳に届く  ぷつ、と音が切れて 呼びかける 「——あ、もしもし。夜遅く、悪い。俺、ノエルだけど——」  おうどうした、元気か! っていつものうるさい感じで言うのかな、とか  そんなのを想像しながら言葉を待ったけど  ——反応は、ない  受話器の向こうから聞こえるのは、電話特有の、かすかな砂のような音だけ  ……あれ? 呼び出し音なくなったし、確かに今、出たよな? 「……もしもし? 聞こえてる?」  あまりにも静かだから、繋がってないのかと思うほどで  こんな静寂から、あの野太い声で  わりぃわりぃ、電波悪くてよ、なんて言ってくるのかな って不思議に思いながら待ってたけど 『——……ノエル?』  しばらくして、聞こえたのは  予想に反して、高い声  瞬間、どきん、と胸が跳ねる  ——忘れない 忘れてない  絶対、聞き間違えない 「……セラ?」  反射的に、問う 『……うん』  ——静かな、でも思った通りの、答え だけど  思わぬ状況に、焦る 「そ、その……俺、……あれ? 俺、スノウにかけたはずだけど——これ、スノウの電話じゃないのか? 一緒にいるのか?」 『……ううん、スノウはここにはいないし、それに、これは私の電話』 「え、あ、そうなのか……」  ど、どういう? 番号は一つ一つ確認しながら押したから、間違えてないはず、だけど 「——あ」  我ながら、間抜けな声を出したと思った 『えーっと、何だったっけな』  連絡先を交換した時の、スノウの様子が思い出される 『何だったっけもないだろ。自分の連絡先くらい』 『まあそうなんだけどよ。自分ちなんてほとんどいねえし、自分の番号にかけることなんてねえだろ?』  ——あいつ、どういうつもりなんだ。今度会ったら……  いや、悪いのは俺か。あの時、気付けばよかったのに——  ……いや、どうせ聞こうとしてたんだ。どっちでもいい、結果は同じ  今大事なのは、目の前のこと 「ご、ごめん、夜遅く。その……寝てたか? 大丈夫か? 少し、眠そうな声だけど」 『まだ、寝てないよ。もうちょっとしたらって思ってたけど』 「そっか。その……ごめんな」 『……ううん』  そして——言葉が途切れる  のどが、乾く  ……何してる、俺  話したかったんだろ?  せっかく今、セラと電話でつながってるんだろ?  だったら 「——セラ」 『……うん』  だけど  言葉が——出てこない  今、どうしてるのかとか 何を思って過ごしてるのかとか  あれだけ、気になってたのに 話したいと思ってたのに  だからこそスノウに頼んで、セラの連絡先を教えてもらって、電話しようと思ってたのに  いざこうして電話でつながって  聞けば、話してくれるのかもしれない状況になって  なのに、何を言えばいいのかわからなくなる  声だけは、聞こえる  でも、どういう顔してるのか、まったくわからなくて  不安で、落ち着かなくなる  何も言わない 俺も、セラも  続くのは、沈黙  ——でも、駄目だ  何でもいい 何かしゃべらないと、駄目だろ  意図してなかったにしても、電話したのは俺なんだし 「——その、セラ」  今度は、うん、とも、何、とも聞かれなくて  また、何も声が聞こえなくなる  砂の音みたいな、静かな雑音だけ 「セラ? ……聞こえてる?」  少しの音も聞き漏らさないように  電話を耳に押し付けて  でも、反応はない 「——セラ、」  もう1回、呼ぶ  何回名前を呼んだのか、もうわからないけど 『——……聞こ……てるよ』  最初と違って、かすかにささやく、今にも消え入りそうな声  それは、返事があったことにほっとするよりも、むしろ—— 「セラ? ……大丈夫か?」  それは……むしろ、むしろ—— 「——つらい、のか?」  思わず出してしまった、質問  ……セラからの答えは、ない 肯定も、否定も  また蘇る、沈黙  ——駄目だ、俺……馬鹿だな  セラが何も言ってないのに、辛いのかなんて  聞いちゃいけなかったんじゃないのか?  過去に苦しんでるなんて、セラ本人に直接聞いたわけでもないのに  そう簡単に踏み込まれたくない辛い場所に、無神経に踏み込んだんじゃないのか?  顔が見えないからこそ、さらに不安は募る 『……私』 「——……セラ?」  今度はさっきと違って、弱々しいささやきじゃなくて  しっかり声は出てる、けど  短い言葉にも、声が詰まるようなものが混ざる  ……泣いてる、のか?  やっぱり、俺が下手なこと言ったから——余計、悪くなったのか  わからない わからないけど 『私……』 「——うん。……何?」  セラは、苦しそうにして  だけどそれでも、何かの言葉を続けようとするから 「セラ……大丈夫。——ちゃんと、聞いてるから。ゆっくり、話して」  俺も、できるだけ静かに  セラが何かを言おうとしているのなら  一言でも、聞き逃したくない  それが、どんな言葉であっても  ——それからまたしばらく、沈黙を挟んで  セラはこらえながら、言った  奥深く入り込んだものを絞り出すように、吐き出すように 『ノエ……ル、に——』 「……俺に?」 『…………ノエル……に、……あいたい——』  それは、……すごく、シンプルな言葉で  俺もそれまでに考えてた色んなことが——ぱっとどこかへ飛んでいってしまって 「——……うん」  そこに残されたもの、ただ一つだけ、口にした 「うん。俺も……セラに、会いたい……」
思いつきベースの小説第4弾です…… ここまではとりあえず考えておりまして…… この後どうしようかなと しかし、何だかものすごい中途半端なところですみません…… ノエセラ……ノエセラ!!ノエセラ!!! どんなノエセラも尊いですよほんと尊い(しつこい) この日のブログ

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