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Echoes of You (3)

全部、忘れてしまえば ※ファミ通後日談小説ベースです。 Echoes of You (2)(幸せにならなきゃいけないのに)へ 『もしもし、セラさん。お久しぶりです』 「うん、久しぶり。元気? ——あ、そうそう。この前雑誌に載ってた論文、読んだよ」 『あ、ありがとうございます。幸いなことにその後問い合わせも多くて、少しバタバタしてしまい、セラさんへの連絡が遅くなってしまいました』 「私への連絡なんて、いつでもいいんだから。気にしないで」 『いえいえ、そんなわけにもいかないですよ』  スノウはたまに来るかして、みんなの様子をああだこうだって教えてくれたりするけど  ホープくんはどちらかと言えば、定期的に電話をくれて  分野は違ってもお互い学問に身を置いてるから、私がやってることや——それにホープくんの研究のことを話したり  それと——“記憶”のことを話す 『あの世界の記憶を持ってる人は、僕たち以外にはいないのかと思っていましたが——記憶が全くない、というわけではどうやらなさそうですね』 「……そうなんだ」 『僕たちのように鮮明なものではありませんが、無意識領域に断片的に記憶があって、何かのきっかけでそれが出てくる、とでも言いますか。  僕の名前を聞いて、”どこかで聞いたような名前"って言ってくる人もいますし……ただはっきり、それがどういうことかわかる程でもないようですが』 「そっか。ホープくんは……あの世界でも、有名人だから」  そう考えると……  ホープくんほどの有名人になっていなくても  例えばお姉ちゃんの名前を覚えている人はいるのかな、とか  スノウ、ヴァニラ、ファング、サッズさんの顔や名前を覚えてる人もいるのかな、とか  パージの原因になった私のことも、覚えてたりするのかな、とか  アカデミアにいた人達が覚えているなら、それでも、私や——それと、ノエルのことも——  ——それ以上に 「でも、やっぱり少し——怖いね」 『……何がです?』 「あの世界に起きたこと。やっぱり……あまり、思い出してほしくないよ」 『……セラさん』 「私が死んだ後の500年間は、辛いことがたくさんあったと思うから。その時の苦しい記憶は少なくとも、忘れていてほしいね……」 『——人によっては、眠ったままにしておいた方が、幸せなこともあるかもしれませんね』  時間の止まった世界での、500年のこと  私は——その場にいたわけじゃない  みんなとは違う、混沌の中に、いたから ——最初は、たくさんのユールの真ん中で、動けなくて  私が立ち去った世界のことは、ただ感じるしかなかったけど  あの時感じた、みんなの苦しみの声は——  ……今でもたまに、思い出してしまう 『ただ今のところ、はっきりと思い出せるといった例はやはり僕たちだけのようです。  ——とはいえ、不幸なことに精神疾患として扱われ表面化していないなんてことも、ないとは言い切れませんからね。今後も注視していきたいと思っていますが』 「……精神疾患」  あの世界のことを、覚えているばかりに?  私があの時、本当の意味で未来を救えなかったから…… 『いえ……必要以上に不安がらせてしまったなら、ごめんなさい。今僕が言ったことは、仮説の域を出ませんから』 「ううん、ごめんね。大丈夫だよ。可能性はあると思うから。そういうことも考えていかないとね。私も何か気付いたことがあったら、言うね」 『ええ、お願いします。僕からの情報共有は、今回はそれくらいでしょうか』 「ありがとうございます、先生」 『やめて下さいよ、セラさん。今までみたいに呼んで下さい』 「そうなんだけど。ホープくんってば、やっぱりすごい人になってるし、大体私より、年上になってるし」 『それを言うなら、AF400年のアカデミアだって、同じですよね。それでもホープくんって呼んでくれたじゃないですか』 「でも……やっぱり不思議じゃない? あの世界の終わりで再会した時、確か14歳の姿だった気がするけど。転生して、どうしてまた大きくなったの?」 『そんなこと聞かれたって、僕にだってわかりませんよ。大体27歳だったはずなのに、ブーニベルゼに囚われて14歳に戻ったのだってわからないのに』 「ホープくんて、いろんな姿になって、忙しいね」 『本当ですよね。いろんな事態に遭遇してきて、そうそう驚くこともなくなりましたけど。さすがに僕って何なんだろうなと思うこともありますよ』 「ふふ、おかしい」  つい笑うと、ホープくんも笑ってくれた 『でもやっぱり、こうやって気兼ねなく付き合える人って、僕には貴重なんです。他のみんなもですが』 「——うん」  それは、わかるところもあるけど 『それで——セラさん』 「……どうしたの?」  どうしたのなんて返したけど、わかってる  きっといつものこと  いつも電話の最後に聞いてくる、半ば定型文のような質問 『ライトさんの居場所……やっぱり、わかりませんか?』  こうして、ホープくんは必死にお姉ちゃんと会おうと頑張ってる  ——どこか、うらやましいくらいに 「ごめんね。私にも……わからなくて」 『そう……ですか』  落胆の声と、続くため息  それでもホープくんは、諦めない 『残念ですが……わかったら、すぐに教えて下さい』 「——ホープくんは」 『はい?』 「今の世界にも、馴染んでるみたい。研究のお仕事だってうまく行ってるみたいだし、私も励まされるよ」 『あ、はは。ありがとうございます」 「でも……だから——」 『?』  私は、スノウにも、みんなにも  言わなくてもいいことを言っているのかもしれないけど 「だから——過去のことにこだわって、いつまでも追い続ける必要もないんじゃないかなって、思うよ」 『——それは』 「ホープくんが、昔の仲間を大切に思ってることはわかってる。私にもいつも連絡をくれて……ありがたいな、って思うよ。  でも、お姉ちゃんはどうなんだろうね?  これだけ探しても、居場所がわからないんだし。お姉ちゃんはもう、一人でいたいんじゃないかな。ホープくんと会うつもりはないんじゃないかな」  嫌な言い方かもしれないけど  そういう風に言わないと、ホープくんは気付けないかもしれないし 「女の人はお姉ちゃんだけじゃないんだし、ホープくんなら、他にいい人だって見つけられるよ」  だから、言わなくてもいいことかもしれないけど  言った方が、やっぱりいいんじゃないかなって  ——そして、ほんの短い沈黙の後、息が漏れた 『はは、そんなことですか』  余裕のある笑みが、声に混じる 「そんなことって……」 『ライトさんが一人でいたいなんて、思いっこないですよ』 「……どうしてわかるの?」 『本来、寂しがりやさんですからね。一人でいるって旅立ったって、一人にしないでって思ってるはずですよ。だから、セラさんには連絡が行ってるんじゃないかなって思って」  ……そんなこと、私だってわかってるのに 『過去のことは——なんだかんだ言ったって、忘れられませんよ。過去も、僕の一部ですからね』 「……ホープくんは、過去を覚えてること、辛いと思ったことはないの?」 『どうでしょうねえ』  ホープくんは、また一度小さくため息をついた 『でも——僕は一度ブーニベルゼに、人間として生きていた記憶を曖昧にされてしまいましたから』  それは、聞いたことがある  私が死んでしまって、文字通り”何もできなくなった”時の話 『大切だったはずなのに、思い出せない。事実を覚えていたとしても、感情が沸き起こらない。それはまるで——真っ白い部屋で、空っぽの自分を見つめているような。自分が生きてきたものが、全てなくなったような』  冷静に、とつとつと、話す  でも、だからこそ  言葉に、つまった…… 『だから今は、記憶が残っていることに、心から感謝してるんです。僕は、ちゃんと覚えている。ルシになったことも、セラさんやノエルくんと一緒に戦ったことも。アリサのことも。あんなにたくさんの人を犠牲にしても、……世界を救えなかったことですら。僕にとって、どんなことであっても過去の記憶は——そして、そこに感情があるということが……何よりも大切で、嬉しいことなんです』 「……ホープくん」 『自分の記憶は、大切にしたい。そこに感情があるのなら、自分に素直に行動したい。今は、ただそれだけですよ。ライトさんのことも、同じです。昔別の世界で起きたことだからって、僕とライトさんの間のことはなかったことにはできないですし、会いたいと強く思うのなら——』  そこでホープくんは一度息を置いた 『……会うだけです。——どれだけ時間がかかっても』  改めて決意するかのような、強さ  ——会いたいと強く思うのなら…… 「……そっか。やっぱり……ホープくんだね」  いくら見た目が落ち着いていたって  一度決めたことは変えない 実現するまで、諦めない 『時間かけるのは、得意技ですから』 「ホープくんらしい、ね」 『はは。とはいえ、もう何百年も生きられないわけですから。少しの時間も無駄にはしたくないですけどね』  それは——時代は違っても、一緒に未来を変えようと手を取り合った時と、同じで  あの時、そこには、ホープくんがいた  今はいない、モーグリがいた  ノエルが……いて……  私も、そこにいて……——  ホープくんの力強い言葉に、引き上げられるように  私も、未来を変えたいって  私も、強くなりたいって  私も、守れるようになりたいって 『セラさんは——』  その強さは、どこか気遣うような口調に、変わって 『過去のことは……もう忘れてしまいたいのでしょうか?』  ——私は、何も、答えられない  また電話するねっていう挨拶をして  通話終了ボタンを押して、携帯電話をテーブルの上に置いた  ふう……と長いため息 「——ねえ」  ソファに座っている人影。そのうつむきがちの横顔に話しかける 「どうしても……ホープくんに会うつもりはないの?」  今夜、たまたま寄っただけ  明日にはまた、違うところに向かう  私の知らない、どこかへ  だから「居場所がわからない」とホープくんに言ったことは、間違いじゃないけど  今ここにいるよって言ったら、どうなったんだろうなって 「ホープくん……本当に、お姉ちゃんに会いたいって思ってるよ」 「そうかもしれないな」 「かもしれない、じゃなくて」  気のないような返事だったから、思わずソファを回り込んで、お姉ちゃんの前に座った 「本当にそうなんだよ。お姉ちゃんが言った通り——居場所を聞かれても、何も知らないことにしてるけど。……可哀想かなって」 「可哀想?」 「だって、そうじゃない。あんなに会いたがってるのに……むげにされて」  お姉ちゃんがいない時だって、何度居場所を聞かれたことかわからない  その度に、知らないよって嘘をついて  なんでそうまでしないといけないんだったっけ、って段々わからなくなった  時間をかけるのは得意技だってホープくんは言ったけど、それでも限度があるよね 「ねえ、お姉ちゃん。会いたいって思われてるってことは——幸せなことなんだよ」  会いたいとすら思ってもらえないことだって、あるのに 「だから——どうしても、会うつもりはないのかなって……」  二人の気持ちが一緒なら  何も問題なく、会えるんだったら  ちゃんと会ってほしいなって——そう思うの 「……どうしても、ということはない」  お姉ちゃんは、静かに呟いた 「……そうなの?」 「ただ、まだ……整理がついてないんだ」  お姉ちゃんは、しばらく間を置いて、言う 「……整理」 「自分の中で……あの世界で起きた——いや、あの世界で起こしたことの、整理が」 「……お姉ちゃん」  その気持ちは、痛いほどよくわかるから  これ以上は、何も言えなくなる  お姉ちゃんも、ホープくんも、スノウも……私も、だけど  それぞれの立場で、いろんなことがあったから  お姉ちゃんは、旅立つ前、言ってた  “もっといい手段は他にもあったかもしれないのに”  “お前を、旅立たせるしかなかった"  ”そして、一人のために、怒りのために——何もかもを変えてしまった” ——と  ……それ以上、何も聞けなかった  私自身も苦しくて  辛そうにしているお姉ちゃんに何も言えなくて  そして……  お姉ちゃんが旅に出るということに、私は反対しなかった  私自身も街を出て、大学の近くで一人暮らしを始めた  ……一人で、考えたくて  私もお姉ちゃんと同様、いろんなことを……整理したかった 「でも、そう簡単にはいかないもんだな」  そう言うと、お姉ちゃんはソファの背もたれに寄りかかって、ふうっと天井を見上げた 「うん……そうだね」 「——ただ」 「え?」 「……いつとは言えない。今すぐには、無理かもしれない。まだまだ時間がかかるのかもしれない。  でももし、整理がついて、決心できたら——  ……その時は、ちゃんとあいつに会いに行くさ」  初めて聞く、はっきりとした意志の言葉  私は、ふっと息を吐いた 「そっか——安心したよ。全然会おうとしないから、もうすっかり会う気はないのかなって心配してた」 「……すまないな。でも……会わないことは、会いたくないことと同じじゃない」 「——そう、なのかな」  自分のことを考えたら——  そういうことも、あるのかなって、思うけど 「まだ会ってはないが。……その」 「?」 「確かにまだ、会いに行けてはいないが。その……会いたい、とは思ってる」  段々と小さくなる声で、言って  お姉ちゃんは、またうつむいてしまった  顔は憮然として、どこか赤くて 「……ふ、ふふっ」 「……笑うな。正直に言ったのに」 「だって、その……お姉ちゃんの口からはっきり会いたいって聞いたのって、初めてな気がするから」 「私がそんなこと、そうそう言ってられるか。お前が心配するから、今日は特別なんだ!」 「ふふ、ごめんね。ありがとう。うん……安心したよ」  お姉ちゃんはやっぱりお姉ちゃんだから、そんなに大きくは変わらないけれど  それでもあの世界にいた時より——やっぱり、素直になったのかな? 「でも、そういうことホープくんに言ってあげたら、絶対喜ぶのに」 「お前……そんなこと言ったら、どうなるか考えてみろ。いつですか、すぐですか、じゃあ今会いましょうって、そんなことになったら厄介だ」 「——愛されてるね。言ったらそうなるって、わかってるんだね」 「お前がホープの様子を逐一報告してくるからな。そうじゃなきゃ、さすがに私だってどうだかわからないだろうな」 「ふふ、そんなことないよ」  ずっと会ってなくても、お互いがどう思いそうか想像できるって  それはやっぱり、強い信頼関係があるって思うよ 「——セラ」 「……どうしたの?」  急に真剣な顔をするから、何かと思ったら 「心配、かけてるな」  ——そんなこと 「姉妹、なんだから。  それにずっと世話も心配もかけてたのは、私なんだしね。お姉ちゃんから見たらいつも危なっかしくて、興味本位で遺跡に入ってクリスタルになっちゃったり、未来を変えたくてお姉ちゃんに会いたくて突っ走って死んじゃったり」 「セラ、それは私が——」 「でも、お姉ちゃんは……ずっと、そばにいてくれたから。私の魂を、ずっと包んでくれていたから——」  ぼんやりした意識  暗くて、冷たい世界  だけど、いつの間にか  小さい頃一緒に遊んでた時みたいな、手をつないで帰った時みたいな、温かさがあったんだよ 「だから私は、今までもこれからも、お姉ちゃんの味方だから。いつもは一緒にいないかもしれないけど、電話もメールも、いろんな連絡手段があるんだもんね。困ってる時も、いつでも味方だからね」  お姉ちゃんに対して、自信を持って言えることは——  誰にも彼にも、同じように言えるわけじゃない  お姉ちゃんは少し驚いた顔をして、私の顔を見て  それからどこか苦笑いをして 「セラには、勝てないな。だけど——お前も、無理するなよ」 「……私?」 「私も、セラの味方なんだからな」 「……その」 「辛いことがあったら、いつでも言うんだぞ」  つんとして、涙が出そうになる  またスノウの時みたいに泣いちゃったら……  きっと、すごく心配してくれるんだろうけど  ——あの時は、特殊  ふっと、息を吐く  笑って、ね、笑って 「うん。……ありがとう、お姉ちゃん」  ——どうして……人には言えるのに  自分のことはよくわからなくなってるんだろう 『自分の記憶は、大切にしたい。そこに感情があるのなら、素直に行動したい』  ホープくんの、真剣な顔 『会わないことは、会いたくないことと同じじゃない』  お姉ちゃんの、照れたような顔  その夜は、二人の言葉が——ずっと頭の中を、ぐるぐると回って 『今を幸せに生きてるなら、それでいいんじゃないかな。過去の人になんて、会わない方が幸せでしょ?』 『んなこと、誰が決めるんだよ! こないだ会ったとき、あいつだって、セラのこと気にしてたんだぜ』  ……私は、もう 『ノエルも——セラを死なせたこと、あの500年間ずっとずっと、後悔してたんだぜ。ルミナの嘘に、すがりつくくらいによ。  だから……連絡してやれよ。会いに行ってやれよ』 『もう敵はいないんだし、私たちが一緒に集まって戦う理由なんて、何もないんだよ……?』 『——俺たちの、絆はっ、そんなもんだったのかよ! お前らの旅はっ、そんなもんだったのかよ!』  ひどく、苦しくて 『……セラは、絶対、大丈夫だ。絶対な』  スノウの、腕の感覚  寝ているお姉ちゃんを起こさないように  息を殺して、静かに泣いた
思いつきベースの小説第3談です…… 最初はやっぱり姉妹を書きたいなと思いましたけど、ライトさん書いたらホープさんがしゃしゃり出てきて、ホープさんパートが大きくなってしまったなあ、と。恐るべしホープ・エストハイム…… ファミ通小説…… やっぱりキャラ同士の絡み見たかったですよ(しつこい) という鬱憤をこっそりはらしているだけですけど。 アリサもやっぱり出したいのかな…いやアリサにはいてほしいけどまさしくアリサには新しい人生歩んでてほしいし、とかいろいろ複雑ですね。 思いつきベースというまったく中途半端なスタンスで書いているので、続くか続かないかわかりませんが、 万が一続いてたらまたよろしくお願いいたします。 でも、こんなどよどよとしたの書いてても読んでてもおもしろくはないですよね……まったく……

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