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Echoes of You (2)

幸せにならなきゃいけないのに ※ファミ通後日談小説ベースです。 Echoes of You (私の居場所)へ 今回はこれのノエル側(のはず)  また会うなんて、思ってなかったのに——  見慣れた扉の向こう  夕暮れ時の淡い光の中に立っていたのは、金髪で、もっさりしたヒゲヅラの大男  俺の顔を見ると、片手を上げてにっと笑う  ——そういう笑い方をする奴を、俺は一人しか知らない 「よっ! 久しぶり!」 「——スノウ? あんた、なんでここに——」 「お前に会いに来たんだぜ!」  そう言うなり、その大きな巨体が俺に抱きついてくる 「お、俺に会いに?」 「何だよその顔。もっと喜べよ!」 「そ、そういうんじゃ、ってか暑い、苦しい、臭い」  そんな会話をしてくると、後ろから落ち着いた問いかけが聞こえてくる 「——ノエル、お客様?」 「おう、客だぜ!」 「あんたはうるさい」  そうして、スノウは家の中に遠慮なく足を踏み入れて—— 「あれ、お前」  スノウは、知ってる人に会ったような口ぶり  ユールは、警戒心のある表情でスノウを迎えた 「……会ったことあった?」  ユールとスノウの接点なんて、なかったと思ってたけど 「んー」  いやに神妙な面持ち 「顔を見るだけなら——1回あったかな。ユール……だっけ。あの世界の終わりで、お前が助けたんだよな」  その後のスノウは、また俺に向き直ってにっと笑った 「——ま、いいや。なあノエル。せっかく俺が来たんだからよ、飲みに行こうぜ。なっ!」 「まったく。相変わらず、強引だな」 「わたしは、大丈夫。一人でお留守番できるから。お友達と、たくさんお話ししてきて」  お友達……か 「……ありがと、ユール。じゃあ、少し留守にするけど——知らない奴が来ても、ドア開けるなよ。ちゃんと確認してから出ろよ」 「わかってる。いってらっしゃい」 「ちょ、その前に、頼む! シャワー貸してくれ! 3週間くらい野宿でよ、ずーっと風呂入ってねえんだ!」 「あんた。そんなんで俺に抱きついたのかよ……」  そんなこんなで、家を出て、屋台村に向かう  雑多な屋台が集まった、ごちゃごちゃした広場の真ん中のテーブルに、横並びに座った  薄暗くなって、色んな色の電球が光って、客先を照らしてる 「こんなところがあるんだな」  スノウは訳知り顔で大きく頷きながら、ビールを片手に豪快に笑った 「お前のおかげでさっぱりしたし、それにうまい酒! ノエル! 最高だな!」  でもそれよりも——俺は、気になっていた 「——で」 「あん?」 「あんた、何やってんだ? なんでここに来たんだ?」  俺のところになんて、来ないと思ってたのに  大体、セラと——それにライトニングと一緒に、幸せに暮らしてるんじゃないのか? 「っとにお前も冷てえなあ。もっと喜んでくれると思ったのによ。それに俺はよ、お前とこうして語り合いてえって、コロシアムに閉じ込められてた時からずーっと思ってたんだぜ? ちーっとばかし遅くなっちまったけどよ」 「いや、その。嬉しくないとかじゃない。ただ……来ると思ってなかった。来ないだろうって思ってたから」 「んなわけあるかよ」  一文字一文字を区切るように否定すると、獣みたいにビールを吸い込んで、ジョッキをテーブルにどんと置いた 「今俺はよ、ひたすらバイクで駆けずり回ってる」 「……で、野宿生活ってことか。それは理解した。で、なんで?」 「おう。仲間を見っけて、つなぎたくてよ」 「仲間を——つなぐ?」 「あの戦いの後、せっかく新しい世界に転生したのによ。バラバラになっちまっただろ? 大変な時を一緒に戦い抜いた、大切な仲間なんだ。……どうしても、もう一度みんなと会いてえ、集まりてえって思ってよ。必死で探して、やっと少しずつみんなの居場所がわかってきたんだぜ」  バラバラになったっつっても案外近くにはいるんだぜ、とスノウは嬉しそうに話した 「お前は探すの、苦労したんだぜ!」  スノウはばしん、と俺の背中を叩いて笑う  そして——しみじみと言う 「——でもよ、無事で、何よりだ」  突然来たと思ったら、遠慮もなくて、ずかずかとシャワーも浴びてって  で、飲みに行こうぜって  こっちがどう思ってるかなんて、全然考えてない  ——最初は、嫌いなタイプだったよな  "そういう人、嫌い?”って聞かれたら、”嫌い”って、即答できた  でも記憶の後半にある——苦笑いしかしなくなったスノウは、もっと嫌いだったから……  マイペースでも、図太くても、無遠慮でも  今はその、いい意味での遠慮のなさが——懐かしい、とも思う  なんで来たんだ? って思ったけど、それでもつい、笑みがこぼれる 「——あんたもな。無事で……よかった。また無茶してんじゃないかって、思ってた」 「ま、ただの馬鹿ってこった。性格は死ぬまで変わらねえって言うけどよ、ありゃ間違いだな。生まれ変わっても変わんねえ。昔よりはまだマシだけどよ、バイクで駆けずり回ってるってのも、周りから見たら無茶ってことなんだろうなあ」  話を聞きながら、ふと、浮かんだ  ずっとずっと昔に、きらきらと光るきれいな海を臨む村で会った顔が、言ってた言葉 「——大将、だよな」 「ん?」 「昔ネオ・ボーダムでさ、ガドーが言ってた。あんたは大将だってさ。本当に、そうなんだろうな」 「何だよ、急に」 「そう思うからな。破天荒で、自由で、義理堅くて。……仲間をずっと大事にして。……それに」 「それに?」  それに…… 「いや……その」  また会うなんて、思ってなかったのに—— 「——俺にまで、会いに来てくれる……」  ざわめきにまぎれて聞こえなくてもいいってくらいの声だったのに、スノウは逃さなかった 「んなもん、当然だろ。お前はよ、たいっせつな仲間なんだからな! 特に——あんな辛い500年を、一緒に戦ったんだからな」  一緒に戦った……仲間 「俺、あんたの仲間って、言えるかな」 「俺とお前はよ、あんとき一番長く一緒に戦ってたんだぜ。今更違うなんて言わせねえんだからな!」  そしてまた豪快に笑いながら、俺の背中をばしんと叩いた  そういえば、あの500年間も。俺に対する人々の悪意から、文字通り、身体を張って守ってくれたっけ……  "大切な仲間だからよ"って、その時も言ってくれたんだった  ——その時は、素直にその言葉を受け止められる余裕は、何もなかったけど 「……ありがとな、スノウ」  最初会った時の印象は、"嫌い"  でも今は——口では色々言ったとしたって、スノウに対しては、信頼、って言葉しか思い浮かばない 「ま、あれだ。どんどん飲めや!」 「飲んでるって」  スノウはどんどん飲んで、食べていく  ガタイも大きいからな その分だけ胃に入るのかもしれないけど 「そういやガドーと言やさ。お前、ガドーも、レブロも、ユージュも、マーキーも会ってるんだよな」  スノウが嬉しそうに、話を振ってきた 「ん? ああ、そうだな。AF003年のネオ・ボーダムでな」  それからスノウは、俺がネオ・ボーダムで会ったノラのやつらの近況を教えてくれた  4人揃って、前の記憶も持って、ちゃんとこの世界に転生していること  そして、やっぱりノラ・カフェを作って、楽しそうに過ごしているらしいということ 「そっか。——安心、した。ちゃんとこの世界に、いるんだ」  あいつらが元気でいること。それは——やっぱり、安堵する  俺はあいつらに、セラをちゃんと連れて帰ることを約束したのに——それを、叶えてやれなかったから  あいつらがあの世界で、帰ってこないセラやスノウをずっと待ってたのかって考えるだけで……辛かったから  そんな記憶、持たずに転生してた方がよかった、ってどこかで思わなくもないけど  それでもちゃんと転生して、セラにもスノウにも会えて、楽しく過ごしてるなら——すごく嬉しい 「おうよ! 新しいノラ・カフェにも、顔出してやってくれよな! 地元じゃ、ちょっと名の知れたところなんだぜ」  顔を出す……か 「そう、だな。でも。行くなら——もう少し、後かな」 「もう少し後〜? すぐだろ! こういうのはすぐ行動しねえとよ! こっからでも、意外と時間もかかんねえぜ?」  そうかもしれない  物理的距離で言えば、それほど遠くないんだろうな  俺だって、ノラの奴らが楽しそうに暮らしてる姿なら、見たいって気持ち……ある  それでも—— 「今はユールも俺も、学校もバイトもあるんだ。移動だけでも金もかかることだし。あんたみたいに思い立ったら即行動、って今はできないかな」  そう言ってるけど、ただ単に——  もし、幸せなら  ……そこに、のこのこ俺が出て行く必要はないんじゃないか、ってさ 「学校に、バイト? って……大変じゃねえかよ。お前ら、どういう暮らししてんだ?」 「そんなに、大したことじゃないけど。  この世界に転生してから——幸いなことにユールは近くにいたから、すぐ会えた。でも他のみんなは、探したけど、すぐには見つからなくてさ」  他のみんなは?  この世界のどこかに、いるはずなのに  どこにいる?  それと、村のみんなはどうなった? いるのかいないのか? ——って  ユールが見つかった後も、必死で探して 「でも探すより、まずは食べて生きてかなきゃってことになって、生活を作ることを優先してた、かな」  生き残りの仲間を捜したいのに村に居続けた、あの死にゆく世界の俺みたいだ、と自分でも思いながらも 「食べるものも調達しなきゃいけない。それに学校にも行かなきゃって……」 「そういう状況で学校にも行かなきゃって思うところが、すげえな」 「生活が大変でも、勉強だけはちゃんとしたかった。勉強は大事って、村のばあちゃんからも——それに、セラからも言われてたし」  みんなを探すのと、今の生活でやらなきゃいけないことをやることと——  単純に、はかりにかけた 「だから、ユールを学校に通わせて、俺自身学校に行きながら、空いた時間で働いてる」  だけど——  仲間を捜したいのに行動できなかった過去の自分とは違うって、思いたくて  どうにか食いつなぎながらでも、みんなを探そうって、……最初は心に決めてたのに  時間が経てば経つほど……心が冷静になって——  俺は、探してるけど。みんなは探してないのかもしれない  それぞれ、新しい生活を過ごしてるのかもしれない、なんて…… 「お前、苦学生じゃねえかよ」 「そういうことなるのか。でも俺の育った村でやってたことと、そんなに変わらない。それにああ見えてユールも金稼げるんだ。時によっては、俺よりも」 「マジかよ。何やってんだ?」 「占い。よく当たるんだってさ」 「へえ、って——未来が視えるってことか?」 「そこまでの力じゃない。でも、勘が働くのか、見えないものの声を聞いてるのか——何か、わかるみたいだな。裏ではもしかしたら、死の国にいるカイアスとユール達と繋がってて、色々教えてもらえてんのかな、なんて思ったりもするけど」 「……へえ」 「前みたいにエトロの紋章が出て、また命を削るんじゃないかって……最初は気が気じゃなかったけど。心配するほどじゃなかった。最初は近所の人にやったのが評判になって広まったんだけど、悩んでた人がすっきりして嬉しそうに帰っていくのを見るのが……自分の力がいいことに使われるのが嬉しいってさ、本人は喜んでるから——それもいいか、って。……他のユールの分まで、嬉しいのかもな」 「そっか。そりゃ、安心だな。——みんな、頑張ってんだな」 「みんな?」 「お前、他の仲間のこと全然知らねえんだろ? ホープとか、サッズとか」 「知らない。どうしてるんだ?」  といって、スノウは教えてくれた  ——ホープは今、研究者として頑張ってるってこと。実績を作っていって、注目されてるらしいこと 「へえ、あの500年の間は——研究者って感じじゃなくなってたけど。元々アカデミーで研究してたんだもんな。そういう環境、戻れてよかったな」 「ま、どうだかな。一介の研究者じゃ終われねえんじゃねえか? 注目もされてるしよ。研究以外の他のこともやることになりそうだよな」 「そうかもな。まあそういうところも、ホープらしいのか。暇ではいられないっていうのか」 「なんせ人類のリーダーだったんだからなあ! 俺と違って、前途有望でよ」 「そりゃそうだ。野宿生活のあんたとは違う」 「んなこと言ってられねえかもしれないぜ? 今は野宿生活でもよ、数年後にはすげーことしてるかもしれねえぜ?!」 「そういうことは、すげーことしてから言うんだな」  ったく生意気なんだからよ……とスノウはぶつぶつと言った 「——でも、本当にホープらしい。そういうの、嬉しい」  この世界への転生後、みんながどうしてるか全然わからなかったから……  こうしてスノウ経由ででも、みんなの話を聞けて嬉しい、と思う 「おうよ。あとサッズは、飛行機のパイロットしてるぜ! それにもちろん、ドッジも一緒だ!」  混沌が溢れてから、スノウと、ホープと、俺をすごく気にかけてくれてた  でも……ドッジが目を覚まさなくなってからは、気落ちして、何も手につかなくなったのを覚えてる……  だから、二人が今ちゃんと一緒にいるっていうのを聞くと、安心する 「ったくあのおっさんもルシになった時から、ドッジとは離ればなれだったんだからなあ。ようやく二人一緒に、落ち着いた生活してるみたいだぜ」 「——そっか。よかった。ドッジのことで、すごく落ち込んでたから——でも今は、家族で幸せに暮らしてるんだな……」  家族で幸せに……か—— 「——あのさ、スノウ」  バラバラになった仲間の、いろんな話を聞いてる  ——でも、一番気になってること、聞けてない  てっきり最初に教えてくれるもんだとばかり、思ってたのに 「おう、何だ」 「……セラ……元気にしてる?」  元気だぜ! とか  毎日幸せだぜ! とか  義姉さんと一緒に俺をいじめるんだぜ! とか  どんな答えでもよかったはず、だけど  スノウの答えは、そのどれでもなかった 「んー、どうかな」  隣を見ると、スノウはへへって笑って腕組みをして、ネオンに溢れた夜空を見上げた 「どうかな、って何だよ」 「どうだかなあ」 「……何だよ、もったいぶるなよな」 「一緒にいねえんだ」 「えっ?」  思わず、聞き返す  今、なんて? 「場所は知ってるし、俺もたまには会ったりするけどよ。セラは今、一人で暮らしてる」 「——なんで?」  予想と、完全にずれた言葉 「元々、一人で暮らしててよ」  元々? 「……元々って何だよ。ライトニングが家にいないってこと?」 「まあ、そうだな。そんでセラも、勉強のためにっつーことで、家を出たんだけどさ」 「——ああ……セラ、先生になりたかったんだもんな。その夢のため、かな」  何となく自分を納得させるように、言って  でも——  何だろ この感じ  心が、ざわつく 「まあ——それも、そうかな」 「それも、って何だよ。まだ、あるのかよ」  スノウは口角を上げたまま、眉間に皺を寄せた 「今は、一人でいたいんだってよ」  ひとりで……いたい?  ひとりでって、なんだ? 誰かと一緒にいない、ってこと?  そんなこと——聞くことになるなんて、思ってなかった 「……なんで……」 「わっからねえ」  無責任にも聞こえる言葉で  久しぶりに、苛つく感覚 「何だよその言い方。わからない? なんでだよ! あんたはセラの——」  そう声を荒げて、スノウの横顔を見て  だけど——  スノウが困ったように、俺を見るから  ——声が、沈む 心と一緒に  身体が、力なく椅子の背もたれに戻る 「……意外。セラは、ライトニングとあんたと一緒に、幸せに暮らしてるのかと……思ってた」  何の確信もないこと  でも、会わないのなら、せめてそうであれば……って思って 「——わかるのは」  スノウは静かに続けた 「今、セラは過去に苦しんでるってことだけだ」 「……なんで」  今日何度目かの、問いかけ  納得できなくて、ふつふつと心の中が沸き立つ  わかってる スノウに言ったって仕方ないこと  だけど——どうしても、どうしても 「俺、納得できない。セラ、たくさん頑張っただろ? もう、苦しむのは十分だろ?  セラこそ、今度こそ幸せにならなきゃいけないのに!」 「……そうだよな」  だけどスノウが、小さく、苦々しく笑うから  それ以上、何も言えなくなって 「わりいなあ、ノエル。いい話、してやれなくてよ」 「いや、あんたのせいじゃ……」  でも……セラ、なんで?  セラがつないでくれた、いのち  セラがつないでくれた、世界  だから、セラが幸せにならなきゃ——意味がないのに  どうして、一人でいたいなんて……  今、何を思って、過ごしてる?  どんな思いで、今—— 「……スノウ」 「何だよ」 「あんたに言うのも、変かもしれない。でも、セラを、頼む。なんだかんだ言って、あんたしか、頼れないんだ」  スノウはまた、んー、とうなった 「何だよ、人任せかよ? 自分で何かするほどでもねえってやつか」 「……違う!」  思い切り、首を振る  そんなわけない、そんなこと……あるはずない、  のに 「でも、俺は……」  段々、声が小さくなっていく 「セラを亡くしてから——  何としてでもユールを助けたかったカイアスの気持ち、——痛いほど、理解できたし  それは今も、変わらない。セラが苦しんでるなら、俺も何をしたって、セラを……助けたいって、思う、けど……」  けど……  自分の腕が、手が  セラにしてやれることって……何だ?  だって  セラにしてやれたことって……何だ? 「俺が守る。絶対に傷つけたり死なせたりしない。……そう言ったのに」  その結果は——  ……何度も思い出しては、身体中が締め付けられた、あの光景がまた……脳裏に甦ってきそうで  気がついたら爪が手の平に食い込むほど、手を握りしめてた  振り切るように、首を振る 「——まだ何も知らなかった時は、世界を守れるなんて、思ってたけど。実際は……一人でさえ、ままならなくて——  世界も壊して——セラも、死なせた  あの時の俺の罪の尻拭いは、ライトニングが背負ってくれたけど……俺は」  ライトニングがいなかったら、どうなってた?  どうしても、考える 「セラは、俺を助けてくれたのに……俺は、セラを助けられなかった。  できたのは、後悔だけ  いや——違うか。それと、ルミナのまやかしに騙されて、ライトニングを殺そうとしたこと、くらいで」  自分の言った言葉に対して、笑えるほど 「俺には——セラにしてやれるなんて、ないんだ……一つも」  最後の日に、ライトニングに言ったっけ  “セラを頼む”——って  あれは、あの時の俺の、正直な思いで  でも  あそこにいた敵を、ライトニングと協力して、すぐに倒して  一緒にセラを助けに行くってことも、できたのかな——なんて  俺自身もセラを助けに行くって道を、無意識に排除してたのかな  あんな咄嗟のことを、ああだこうだ言っても仕方ないけど  今、結局は同じこと、言ってるんだな 「——お前は、罪を負わされただけだろ」 「でも」 「でももくそもねえ。それによ、お前は今、でっけえ間違いをしてんだぜ!」 「……何だよ」 「人選ミス、ってやつだ! 俺に頼ったって、意味ねえぜえ? 俺だって、なーんもできてねえんだぜ。昔も今もな」 「——そんなこと、は」 「あるだろ? 最後に何とかなったからいいけどよ。俺だって結局、解放者様の助けがなきゃ、何もできなかったんだぜ?  俺らの500年? えーっと……10万日? 20万日? ……の頑張りの価値なんてよ、解放者ライトニング様のたった13日間の足下にも及ばねえ、ときた!  無駄無駄。失敗、失敗、また失敗! な! わかるぜ! 俺たちゃ仲間だ! サブキャラ仲間! 敗者仲間! な! 俺たちゃ何だったんだよ、ってな!」 「お、おい、スノウ」  飲み過ぎて、やけになったのか? 「——それでも、だ!」 「何だよ!」  けど——  スノウはやけになった、ってわけでもなかった 「ダメだった時のこと、振り返るのもいいけどよ。——少しは自分のことも、認めてやれよな」 「……え」 「普通のやつならよ、とっくに逃げ出したくなるようなことだったんだぜ。でも、お前は逃げ出さなかった。どんだけボロボロになっても、お前は投げ出さなかった」  思ってもない、優しい目で  何か、その 「事実、お前が動かなかったら、あの世界は滅びてた。混沌が溢れ出す前にな」 「……でも」 「お前が動かなかったら、セラだって……暗い顔してよ、ただ俺らの帰りを待つだけで、一生終えてたかもしれねえんだ。  今は少し悩んでるかもしれねえけど、セラは……大丈夫さ。お前が導いてくれて、今があるんだからな」 「——セラ、は……」 「大丈夫だって。お前の目から見たってよ、セラ、変わってたろ?」 「……うん」  それは、間違いなく  だからこそ、今何かに苦しんでるんだとしたら——何よりも、悲しい 「コロシアムに来た時だって、ほんとさ、見違えたんだぜ? こういう顔もするんだってよ」  あの時はびっくりしたよな、とスノウは笑った 「あの世界は、どのみち救えなかった——  でもお前がいなかったら、みんな消えてただけだ。お前がいたから、ギリギリだとしても、みんなが助かる道があった。そうだろ?」 「……うん」 「ダメだった時のことばっか、考えんなよ。お前は間違いなく、すっげえ奴なんだぜ!」  臆面もなく、力強く言うから  俺の方が少しだけ、気恥ずかしくて 「すげえ奴って。——別に……その、他に表現ないのかよ」 「わっりいなぁ。俺賢くねえからよ、それ以外思いつかねーわ。シンプルで、一番お前に合ってるぜ」  思わず、頭をぽりぽりと掻いた 「……あんたに励まされるなんてな」 「へっへ。俺も、自分が嫌になるくらいの大失敗して、いい経験したのかもな。失敗も経験! 成長したってことだ!」  あくまでもいつもの調子で、力強く言うから  妙に納得する 「他の誰でもないあんたが言うと——説得力、ある」 「だろ? 苦みばしったいい男になっただろ? 義姉さんにもそんなこと言ってたりしたんだけどなあ」  そんなことを言いながら、スノウは懐かしそうに笑った 「——お前が育ったところはよ、——きっと、失敗したら死ぬ、ってな世界だったんだろうな  お前にゃ及ばねえけどよ、その気持ちも少しはわかるぜ。ルシになった時は、同じようなもんだった。失敗したら、シ骸。そういうもんだった。  その後は、絶対うまく行くと思ってたのに——失敗して、セラが死んじまって……  それからの500年は、失敗したら、自分じゃなくても、たくさんの人が死ぬ。  失敗したら、自分か誰かが死ぬ。そういう世界に、俺らはいた」 「……ああ」 「でもよ、俺らは今——生きてるんだぜ。ギリギリで力を合わせて勝ち取った、新しい世界によ。  本来は、こういうことさ」 「……こういうこと?」 「生きてれば、失敗したって、やり直しはきく」 「——やり直し」  それからは  久しぶりに、いろんなことを話したような気がする  スノウの遠慮のなさは、すごく懐かしくて  少し縮こまってた心が、少しほぐされるような  そうして、そろそろ屋台村も閉まるという頃になって、席を立つ 「——あんた、今日どうするんだ? 夜遅いし、うちに泊まっていってもいいけど」 「ノエル、お前やっさしいなあ! みんなとは大違いだぜ!」 「……まあ、たまにはあんたに野宿以外の生活もさせてやらないとな」  ユールはどっちかって人見知りなところもあって、人を選ぶ方だし  最初にスノウに会った時の反応も、いいものでもなかったから  泊まらせるってどんな反応するかな、って心配だったけど  そこまで気にするほどのこともなかった  ——特に、スノウの方 「ユール、仲良くしようぜ、みんなで寝ようぜ。なっ!」 「そうだね。スノウ……さん」 「こいつにさんづけなんて」「いいんだぜ! スノウで!」 「う、うん。……スノウ、えっと、その——わたしが、ごめんなさい」 「何謝ってる? そんな必要ないんだぞ、ユール」 「ううん、いいの。ごめんなさい」 「いいってこった! ハッハハ!」 「よくわかんないけど……それにしてもあんたってほんと、遠慮がないな」 「それがいいところだろ?」 「……ああ、そうだな」    そして、翌朝  日が昇って、数時間 「また、来てね」 「おうよ! また来るぜ!」  ユールは玄関で、顔の高さで手を振って、微笑みながらスノウを見送った  スノウも両手をあげて、ぶんぶんと振り回すように応えた  ……二人は、あまりいろんなことを話してたわけじゃないのに  それでもユールが、また来てねなんて言うなんてな 「まったくあんたって……不思議な奴だな」  家のすぐ近くに停めといたバイクの場所まで来て、スノウがバイクにまたがるのを眺めながら、呟く 「ん?」 「いや、別に——それであんたは、今からどうするんだ?」 「ファングとヴァニラを探しに行く。見つかったら、お前にも教えてやるよ。ってか、全員見つかったら今度みんなで集まろうぜ!」  みんなで集まる……か  ——もう、会わないのかもしれないって思ってた  いくら探しても、なかなか見つからないから それぞれ新しい生活を築いてるのかもしれないって  でも、こいつは——スノウは、ちゃんと仲間を探してた 「……あんたは、やっぱりすごいな」  ……俺は?  それに、みんなで集まる時、セラはどうしてる……? 「お前もな! まあ、また来るからよ。また飲みに行こうぜ」 「——ああ、そうだな。あんたに会うの、楽しみにしてる」 「おう! ——ああそうだ、ノエル。お前の連絡先教えろよ。電話とかメールとかできた方が、何かと楽だし。俺のも教えるからよ」 「ああ、わかった」  幸いにしてメモ帳があったからそれに書いている間、スノウはえーっと何だったっけな、と言いながら書いていた 「何だったっけもないだろ。自分の連絡先くらい」 「まあそうなんだけどよ。自分ちなんてほとんどいねえし、自分の番号にかけることなんてねえだろ?」  そんなもんか、と言いながら紙を交換する 「——あのさ、スノウ」 「あん?」  あのさ、スノウ。その紙、一応セラにも渡してくれないか?  一応って……何  いや、一応かどうかはいい。ただ……その、渡してくれたら  でも、何のために?  渡してもらって、どうするんだ?  セラは一人でいたがってるって、スノウが言ってた  ライトニングともスノウとも一緒にいないようじゃ  ——俺になんて、もっと、連絡なんて取りたくないんじゃないのか?  なんて、また、そんな考えが 「……」 「何だよ?」 「いや。あんまり野宿ばっかりしてないで、安全なところで寝泊まりしろよ。この辺だって、何が起こるかわからないんだからな」 「そうだな。気ぃつけるさ」  へへ、とスノウは笑った 「じゃあ、またな」 「ああ、また」  いつかと同じ。——今日は3人じゃなくて、2人だけど  がつん、と拳と拳をぶつけ合う  だけど今度は、笑って 「じゃあな!」  そうして、スノウは大きなバイクに乗って、走り去っていった——
ファミ通ベースのセラさんを先日書きましたが、それのノエル側ですかね。 セラさんの方を書いたらまあ自然とノエルさん側も出てきてこうなりました。 セラさんと同じくらいにしようとしましたが、少し長めになりました。 自分的に理想のスノノエ&自分史上最高にかっこいいスノウです!!(あくまで当社比!!) なんていうかこうやっぱり最初は嫌いだったかもしれないけど、似てるところもあるし、一番長く一緒に戦ってたんだし、辛いことを共有し合った戦友/親友みたいな感じで、なんだかんだ腹を割って話せるような信頼関係があるといいな!とか。 スノウもなんていうか、LRでライトさんにも「苦みばしった〜」とか言ってましたが、イケイケドンドンだけじゃなくて失敗も経験して懐が広がったかんじが出てたらいいな〜と思ってますが! 表現できてるかどうかはともかくですが(^o^; そういうのを目指しておりました! いや、ノエルがちょっと暗めなのは、まあ当サイトでのデフォルトでしょうか(苦笑) お読み頂いてありがとうございました〜!

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