文字サイズ・配色変更(試験版)

長い文章ですので、できるだけ目に優しい環境でお読みいただければと思います。

    背景
  • 元に戻す
  • ピンク
  • 青紫
  • 灰色
  • 反転
    文字サイズ
  • 元に戻す
  • 少し大きく
  • 大きく
    文字の太さ
  • 元に戻す
  • 太字
    行間
  • 元に戻す
  • 空ける

トップページ > > FF13 > LRFF13

言葉の裏側(ユーレブ編)

 びじさんからのリクエスト(?)で書かせていただきました、SSです。  元となった作品はこちらです→「言葉の裏側」    少し歪んだ窓から、外を眺める。  夜の海、波の音を聞きながら、ただじっと、小さな星の散らばった空を見つめる。 「……」  どうしてか、その景色とのつながりが切れてしまったように、心がひとりぼっちで。  全部が曖昧になっちゃったみたいに、自分がどこにいるのかも、わからなくなりそうな。  胸が、詰まって  何とか吐き出した長い長いため息は、すぐにどこかに散らばって、消えていった。 「たしかな約束なんて、どこにもないのかもしれないねえ……」  言おうと思ったわけじゃなかったのに。つい言葉が、口から出てた。 「……レブロ、どうしたの?」  後ろから、落ち着いた、だけど心配そうな声がかかる。  そういうところ、聞き逃さないよね。……優しい、人。 「……何でもないよ」  だけどうまく言えそうもなくて、つい首を振った。 「ただ、夜が長くなってきたなって……思って」  ユージュは、静かに抱きしめてくれた  確かなものなんて、わからない  それでもね  月あかりの中 ユージュの腕の中だけは、確かなものみたいに……思えたんだよ  その時は、ね    *  少し陰ったくもり空。降りしきる雨を窓から見上げながら、時々強まる雨音に、ユージュは首をすくめた。 「不思議だねえ、こんなに天気変わるなんて。昨日はあんなに、月がきれいに見えてたのに」  そんなふうに言ってるけど、ユージュはてきぱきと外に出かける支度をしてる。  あたしは……どうにかこうにか服を着たけど。まだ身体の奥に残る気だるさに勝てないでいるのにね。 「……そうだねえ」  こうしてるうちにも、あと何分もしないうちに、ユージュはこの家を出て行く。  なぁんて言ってもね。別に知らない女のところに行くわけでもない。誰かみたいに、当てのない放浪の旅に出るわけでもない。何のことはない、顔なじみの村のみんなと一緒の、開拓の仕事。行き先だって、たかが知れてる。だから心配なんて何もないし、大事なことだって、わかってるんだけどさ。  だけど、今日は…… 「……この分だと、今日は仕事にならないんじゃないのかい?」  だから、ユージュ。今日は、仕事じゃなくて…… 「そうだねえ。まあでも雨の日だからこそ、やれることもあるからさ」  ……はあっ  そうじゃないのにさ。  あんた、いつからそんなに頑張る人になっちゃったんだっけ。  昔はさあ、もっと……いい意味で、遊びのある人だったと思うんだけどねえ。  ……まあ、本当に若い時だったかもしれないけどさ。 「レブロは、ゆっくりしてたらいいよ」 「別に……ゆっくりなんてしないよ。あたしだって、やることあるんだからね」  だって、あたしだけでゆっくりしたいわけじゃないんだから。  あんたと一緒に、いたいってのに。 「そっか。レブロらしいね」  バーカ。……ったく。 「……でしょ」  微笑みながら、ユージュは玄関に向かう。あたしも、のろのろとついていく。 「外まで……見送るよ」 「うん、ありがと」  見送るっていうか……見送りたいわけじゃないんだけどさ。  そうして、ユージュが玄関のドアを開けると、もうまるっきり後がない気分。  ……あーあ。やっぱり、行くんだね。  昨晩はあんなに、情熱的な言葉も吐いてくれちゃってたのにさ。  あの言葉は、あの時だけだって言うのかい?  こういう切り替え、やっぱりユージュは男だし、あたしは女なんだなって思うよね……  だって、雨なんだよ。今日くらい、みんなで休めばいいのにさ。  今日はもっと、一緒にいたいのに。  ……あたしのそばにいてほしいのにさ。 「……」  ……なんてね。  そんな女々しいことあたしが言ってるなんて、村のみんなに示しがつかないし。  ユージュが村のためにって頑張ってるのに……水を差したくないし。  わかってる。わかってるよ。 「それじゃ、行ってくるね」  ユージュが言うから、何とかがんばって口角を上げる。出かける時くらい、笑顔で見送りたいよね。 「……ん」  それでも、いってらっしゃいって言葉は、出てこない。 『行ってくるからね』  おぼろげに覚えてる、ほんとのお父さんとお母さん。そう言ったまま、帰ってこなかったんだよね。 『行ってくるぜ! すぐ戻ってくるからよ』  一緒に育った仲間も、同じだった。すぐって一体、いつなのさ。あんなに自信満々だったくせにさ。 『行ってきます!』  ほんとの妹みたいに思ってた女の子も、どこかに行ったまま。何とか自分を納得させて送り出したつもりでも、……たまには、こうして—— 「……」  ユージュは、鉛色の空を振り返るように、あたしに背を向けた。  ひんやり湿った空気。手を差し出すように雨粒をすくいながら、ユージュは天を見上げた。 「……雨、やまないねえ」  ……そうだね。  もし本当にそう思うなら、もう少しここにいたらいいのに。……やむまでだけでも、いいから。  あたしほんとは、待ちたくないんだよ。  おかえりって言うまでの時間が、長くてさ。 「……ねえ」  いつの間にか、言葉に出てた。あたしの手が……ユージュを、追いかけてた。  ユージュが、振り返る。 「……どうしたの?」 「どうしたって、いうか……」  どうしたなんて、あたしがわからない。  ただ……今日は、一人になりたくない。  だけど、行かないでなんて、泣けるわけもない。  若い女の子じゃあ、ないんだしさ。  ユージュは、ユージュ。他の人と同じだって思うわけじゃないよ。  でも、ね。見送るの、嫌なんだよ。普段何でもないって顔してたって、そういう時だって、あるんだよ。 「ちょっと……寒くない? ……雨だからかな」  そう言ってから、あたしは首を大きく振った。 「……ごめん、何でもないんだよ。早く行っといでよ。ほら時間」  ユージュが案外ゆっくりしてるから。早く行ってしまえば、あたしも余計なこと言わないですむんだ。 「……レブロ」  男性にしては滑らかな手で引っ張られて、懐かしい胸元に、引き寄せられた。  寒かった空気が、ふんわりとあったかくなる。  強がってたって。……あたしは結局、いつもこれに甘えてばかりだ。 「——ちゃんと、すぐ帰ってくるからさ。心配しないで、待ってて」 「心配なんて……してないんだから。余計なこと、言わないでよ」  ユージュは、うーん、ってうなった。 「そっか。じゃあ、楽しみに待ってて」 「……楽しみに?」 「俺も、レブロの夕ご飯、楽しみにしてるよ」 「……ご飯だけ?」  余計なことを言ってるのは、あたし。それでもユージュは、動じない。 「他にもさ。昨日の夜の続きでも。レブロ嬢は、今日はどのようなのがお好みでしょうか」 「……バカ」  それでも、聞いてくれるから。 「……昨日みたいなのも、好きだけど。今日は、ゆっくり抱きしめててほしい……」  少しの間。それから、ユージュの穏やかな笑みが、聞こえた。 「お客様のご注文——確かに承りました」 「……本当に?」 「本当。そうだねえ、すぐにとは言えないけど——これが前菜だって、思っててよ」  そうやって笑いながら、もう一度、ぎゅっと腕に力を込めてくれる。  何だかうまくあしらわれてる気にもなってくるけど、全然、嫌な気もしない。 「レブロがいるから、俺もがんばれるんだからさ」  ——むしろ、寒さが、やわらいでく。 「……うん、わかったよ。楽しみに、待ってるよ……」  あの時のユージュの腕の中。すごく、あったかかったっけ……    * 「——レブロ、準備できた?」  ユージュはドアの影からあたしの様子を覗いて、それから驚いた声をあげた。 「……って、あれ? もしかして、まだまだ?」 「あ、あとちょっとだから! もうすぐ!」  弾かれたように、あたしは椅子から立ち上がった。  テーブルの上に置いてあったいろんなものを、バッグに詰め込む。財布、ケータイ。あとなんだっけ? 「寝坊したわけでもないのに。今日は珍しく、のんびりしてたね」 「ちょっと、考えごと! でも、大丈夫! すぐ行くから、先に玄関に行ってて」 「はいはい」  バタバタしながら荷物をなんとか全部まとめて、階段を駆け下りると、玄関口でユージュが待っててくれた。 「階段落ちるんじゃないかとひやひやしたよ」 「あたしがそんな間抜けなことするわけないじゃないの」 「そうなんだけどね」  そう穏やかに笑いながら、ユージュが手を差し出してくれる。 「はい、行くよレブロ」  家を出る時の言葉は、行ってきますじゃなくて、行くよ、に変わった。  一緒に住んで、一緒に家を出て、一緒に働く。……あたしも随分、ユージュから離れられなくなってるもんだねって、たまに思う。 「四六時中一緒だなんて、飽きないんすかね〜」なんて、マーキーもからかうけどさ。 「しょうがねえだろ。あいつらはもう、ああなんだからよ」って、ガドーがあきらめ顔で言う。 「ああって何さ、ああって」 「自分がよーくわかってんだろ? 説明が必要なのかよ」 「まあまあふたりとも、落ち着いて……」  でも、わかってる。あんたに言われるとついムキになる時もあるけど。  ——だけど、そういうことなんだよね。あんたの言うこと当たってるよ、ガドー。  もうそれが、あたりまえなんだよ。ずーっと、一緒なんだから。あの世界でも、今だって。一緒にいる生活をずっとやってるんだから、今更変えられないんだよ。  でもさ、それってガドーもマーキーも、同じでしょ? やっぱりあたしたちは、飽きもせずノラハウスをやってる。あの世界でもそうだったってのにさ。飽きないんすかね〜ってあんたにも言ってやるんだからね、マーキー。  あたしも、ユージュも、それにガドーもマーキーも、一緒にいるのが、自然だから。  だからあたしは——ひとりじゃない。大丈夫。  それが今は……心の底から、信じられるんだ。 「うん、行こっか。ユージュ」  ぴたっとくっついて、腕を組む。 「……どうしたの?」 「どうしたのって、いつもやってるでしょ?」 「それも、そうだねぇ」  どこか飄々としてのんびりしてるけど、変わらない笑顔。 「ねえユージュ。今回もずーっとその髪の色で通すの? おしゃれさんなんだし、たまには他の色にしてみてもいいんじゃない?」 「うーん、考えないこともないけどね。赤っぽくするとガドーに近くなるし、黄色だとマーキーだし。二人と被っても嫌だし」 「そっか。おしゃれさんとしては、大問題だねえ!」 「それに青いの珍しいから、レブロに見つけてもらいやすいかなって」  爽やかな風が吹く、青空。  また今日も、いつもと変わらない、だけど新しい一日が始まるんだ。
びじさんからの半分冗談半分本気のリクエスト……ということで、SSを書かせていただきました。 ノエセラなら書けるかもと答えたはずなのにいつのまに逆に! 元の作品の雰囲気が素敵でですねほんとに→「言葉の裏側」 何となく受け取ったイメージはこんな感じになりました。 ユーレブの関係性の雰囲気を壊さずに、びじさんの作品の雰囲気を表せたかどうか……(汗) あっあと一番最初のラブなあたりはですね……すみません描写しきらず 笑 素直が一番とは思いつつもまあうまく言えなかったりとかそういうこともありますよね…… 言わなくても伝わる関係性もいいなと思いますが、まあそれができることってすごく珍しいような。 それができる相手がいればやっぱり大事にしたいですし、それが簡単にはできないたくさんの人達も、言葉を尽くしたいなと思いました。お互いオープンでいられたら、一番いいですね! でも書いてて思いましたけど、ユーレブっていつのまにやら安定感半端ないですね! 転生したあとも、安定した幸せのなかにいそうです。最後のあたりは、そういう雰囲気でいてくれたらなーという希望を込めて書かせていただきました(^^) リクエストありがとうございます! イメージ違うとか言葉遣いがあれだとかご指摘ください(>o<) ノエセラ編も大雑把な草稿はあるのでのろのろっと書きたいです。 ※最近書きかけ多くてすみませんですはい(><) お読みいただきましてありがとうございましたー!

コメントいただけたら嬉しいです!(拍手的な感じの使い方もできますです)

お名前(任意) コメント

※ボタンを押したらこのページに戻ります。